ザッポスは、「インサイダー」のサイトが志望者と企業文化の適合性を明らかにする役に立つものと期待している。そして適合性を評価する最適の方法は、社員とインサイダーが交流(サイトでのメッセージの応答やビデオチャットなど)を重ねることと考えている。これは社員と採用担当マネジャーにとって、高いハードルにもなる。つまり、インサイダーたちとの交流を綿密かつ効果的に進め、分析する必要があるのだ。ゼイパーは言う。「当社は退屈で時代遅れの求人公募をやめ、候補者たちと前もって積極的に対話を重ねておきます。そのためポジションに空きが生じた時には、最適な候補者が誰であるかを正確に把握できているのです」

 ただし研究によれば、候補者とのこの種の対話は、専門知識を持ち訓練された熟練のインタビュアーの確保に投資しない限り、有効なアプローチにはならない。パフォーマンスの50%が企業文化と人材の適合性にかかっているというザッポスにとって、この投資が年間数百人に及ぶ最適な採用に結びつくならば賢明なアプローチといえるだろう。

 しかしあなたの会社の募集職で、求められるスキルが特殊なため人材が希少で、履歴書や過去の仕事の見本などが参考になるならば、それらをなるべく多く集めることでサプライチェーンが最適化される。初期の段階で人材プールからスキル保持者を選別するために、場合によっては社員による対応ではなくアルゴリズムを利用すべきかもしれない。ザッポスと同様に綿密なコミュニケーションによって企業文化への適合性を評価してもよいが、その際はおそらく、「インサイダー」よりもずっと小規模の事前に選定された候補者グループを対象として、熟練者による高度なインタビューを数回実施するだけでよいかもしれない。

 または、「文化に合った人材を獲得する」よりはむしろ、「獲得した人材に文化を浸透させる」べきかもしれない。ディズニーやトヨタ、それに軍隊のような組織は、研修を通して独自の価値観、信念と規範を植え付けている。さらに、必要とする人材やスキルがきわめて希少である場合は、むしろまったく採用しないという方法が最適なサプライチェーンになるかもしれない。つまり、社員ではない数千人もの人材にクラウドソーシングするのだ。そうすれば企業文化への適合性を評価する必要がなくなる。

 ザッポスのような企業は、人事面での数々のイノベーションによって素晴らしいサービスを実現している。しかし他社はそれらをただ模倣すればよいというわけではない。人事担当者と組織のリーダーは、こうした事例をきっかけに適切な問いかけをして、賢明な議論を交わすべきである。


HBR.ORG原文:Zappos Killed the Job Posting – Should You? May 28, 2014

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ジョン・ブードロー(John Boudreau)
南カリフォルニア大学マーシャル・スクール・オブ・ビジネスの教授。経営学を担当。同大学のセンター・フォー・エフェクティブ・オーガニゼーションズの研究ディレクターを兼務する。