なぜ、苦しくても値下げしなかったのか

――学校経営でも、マーケターとしての一面を感じるということですね。

高津 はい。それはより経営的な意思決定の場面でも感じます。一時期、米ドルとユーロに比べてスイスフランがすごく高くなりました。私たちのライバルである海外トップスクールは、ほとんど米ドル圏かユーロ圏にあります。すると、スイスフランを用いる私たちだけ他の学校に比べて2割、3割学費が高くなるという現象が起こったのです。

 当然、市場と接する側の私たちは「少し値段を下げたほうがいいんじゃないか」と思ったりもします。学内でもいろいろな議論がありました。でも、そのときにテュルパンから全員宛てで「絶対に価格調整はしない」というメールが来た。「それをすると長期的なダメージを受けることになる。そうではなく、いまお客様からいただいているお金以上の価値を提供するために、一人ひとり、そして組織として工夫と努力を重ねよう」というメッセージでした。

 一度でも値下げをすると、もう元には戻せません。彼はマーケティングの論考をあちこちで発表しています。そこには「価格調整に関しては慎重であるべきだ」とか、「ブランド価値を長期的に大事にすべきだ」といった、他のマーケティングの先生もおっしゃっているような言葉も出てきます。ただ、そうした理論を経営者として実行しているので、言葉の重みが違います。

――テュルパン教授は「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」にも参加されます。当日は、彼のどんな魅力を感じてもらいたいですか。

高津 今回、彼はファシリテーターとして参画しますが、テュルパンはファシリテーターとしても一流だと思っています。

 彼は、グローバルリーダーに必要なものは3つあるとよく言っています。“curiosity”(好奇心)と、“empathy”(共感力)、それから“imagination”(想像力)です。彼のファシリテーションのなかにも、この3つがよく見えてくるはずです。

 彼の姿に、ダイバーシティを心から信じる、マーケティングを基盤とした学者であり、マーケターであり、経営者であるテュルパンの何かを感じ取ってもらいたいと思います。 

 

【編集部からのお知らせ】

9月24日・25日の二日間、世界中からマーケティングの巨星が結集!

ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014

日程:2014年 9月24日(水)10:00~18:45(予定)
       9月25日(木)9:30~17:40(予定)
会場:グランドプリンスホテル新高輪「北辰」
登壇:フィリップ・コトラー、デビッド・アーカー、アル・ライズ、ドン・シュルツ、高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)、新浪剛史(サントリー顧問 10月1日サントリーホールディングス株式会社CEO就任予定)、吉田忠裕(YKK代表取締役会長)、魚谷雅彦(資生堂代表取締役執行役員社長)ほか。
申込:お申し込みはこちらから。
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