②チャネル・ニッチ

 チャネル・ニッチとは、リーダーが追随できないチャネルをおさえ、それを通じて限られた市場の寡占を作る戦略である。税理士ルートをおさえた大同生命、全国のバレエ教室ルートを疑似チャネルとしておさえた、バレエ用品のチャコットなどがその典型例である。

 大同生命は、中小企業の経営者在任中の死亡保障に絞った保険を販売している。2012年度末の個人定期保険の中で、大同生命は16.1%のトップを誇る。同社は、76年に日本最大の税理士団体であるTKC全国会と提携した。税理士の販売代理店化を組織的に展開し、チャネル化したのは、同社が業界初であった。税理士にとって、顧問先企業の発展は重要であり、生保はその手段の1つと考えられてきた。同社は生保の契約が成立すれば、税理士に手数料も入る仕組みを構築し、ウィンーウィン関係を築いた。

 同社は大手生保が同質化できない仕組みを作った上で、大手が主力とすることはやらないと決めている。それは、一般個人を対象とした保険の販売は行わない。定期付き終身保険などは積極的には販売しない。単純な価格競争には参加しない、の3つである。

③特殊ニーズ・ニッチ

 特殊ニーズ・ニッチとは、一般的ではない特殊なニーズに対応した技術・サービスにより、限定された市場を獲得する戦略である。タクシーの自動ドアに特化したトーシンテック、理容・美容用椅子に特化したタカラベルモントなどがあげられる。

 1964年の東京五輪の時に、大手タクシー会社は自動ドアを導入した。この分野で現在9割のシェアを握っているのが、トーシンテックである。同社が主に採用している真空式エアドアは、運転手が手でレバーを引っ張ることで開く“手動式自動ドア”である。運転席のレバーに接続された金属棒が後部ドアにつながり、そのため少しだけドアを開けたり、ゆっくり閉めたりという微妙な操作が可能である。単純な構造のため維持費はかからず、故障も少なく、短期間に取付けが可能である。同社の製品には、車種ごとの特注品が少なくない。そのため内製化を高め、納期、数量対応をしている。

④空間ニッチ

 空間ニッチとは、限られたエリアだけを事業領域として資源集中することで、その地域に関しては、大手企業であってもシェアを取れない状況にしてしまう戦略である。北海道に特化したコンビニのセイコーマート、豊橋のヤマサちくわ、などがあげられる。

 セイコーマートは71年に酒販店から業態転換し、北海道に特化したコンビニである。北海道における人口カバー率は99.5%、道内の店舗の自治体カバー率は95%、道内シェアは大手を抑えて36.3%とトップである。同社の特徴は、第1に他のコンビニと違い直営店が多く、現在約7割が直営である。第2に24時間営業を基本としない。第3に自社ブランドの食品工場を持ち、製販一体の体制をとっている。そして第4に、店内で調理する「ホットシェフ」という形態も力を入れている。これはオーダーを受けてから、カツ丼などを作る形態である。

 同社は、リーダーのセブンーイレブンに比べて、北海道内に高密度の店舗、物流ネットワークを持っており、簡単には攻撃されない。また製販一体の体制やホットシェフなども、なかなか追随できない。ホットシェフは手間がかかるため、フランチャイズ加盟店からは反発が多い。それ故に直営化を進めている面もある。