しかし、給与による差別化のみを目的に従業員を優秀・平均・低に分けるのはリスクが伴う。優秀者が定期的に10%の昇給を得ているのに、平均の人が2%のみであれば、反感が生まれ全体的な生産性の低下につながる。さらには従業員同士の結束も弱まり、社内いじめの発生にもつながりかねない。かといって、報酬の差別化をまったくしなければ最も生産的な人材を失うおそれがある。従業員の業績は時期によって浮き沈みがあると考えられる。したがって妥協案として、上位5%のパフォーマーにボーナスを与えることで、年間の報酬に大きく差をつけるという方法がある。KMPGの調査によれば、業績が好調な企業の73%は、業績トップの社員へのボーナスに上限を設けていない。一方で、業績の悪い企業のほとんど(81%)には上限があるという(英語報告書)。

 ハイパフォーマーの満足度を大きく左右する2つ目の要素は、フィードバックである。マネジャーはどのくらいの頻度で、部下のパフォーマンスについて本人と話し合っているだろうか。おそらく十分とはいえないだろう。調査によれば、ハイパフォーマーの50%は少なくとも月に1度は上司と話し合うことを望んでいるが、その期待が満たされていると答えた人はそのうちの53%にすぎなかった。従業員へのフィードバックを年に1度や半期に1度の人事考課だけで済ませている企業では、ハイパフォーマーはもっと頻繁なサポートを求めており、自分が過小評価されていると感じるようになるだろう。

 また、ハイパフォーマーには積極的に学習したがる傾向も顕著に見られた。この特徴は、誰が将来のハイパフォーマーになるのかを見分ける1つの目安だといえる。とりわけ北米では能力開発が重視されており、ハイパフォーマーは自主的な学習以外の選択肢も欲している。彼らの3分の2は、「上司が公式な研修プログラムの導入といった支援をしてくれない」と報告している。

 たとえ研修に割ける費用が限られているとしても、ハイパフォーマーに何を学んでもらうかという視点に立って仕事を与えれば、違いが生まれる。中国在住でミレニアル世代に属する有能な回答者は、現職での勤続年数が長すぎることを認めたうえで、次のように語っている。「私の上司は仕事を指示する際に、その仕事を通じて新たに何を学べるのかを必ず説明してくれます。だから私は彼女の下で働き続けているのです」。与えられたタスクやプロジェクトから何を学べるかを伝えるだけでも、仕事を続けるモチベーションを喚起できるのだ。

 最後にもう1つ明らかになったことがある。ローパフォーマーはハイパフォーマーに比べて、転勤を受け入れる傾向が非常に顕著であった。たとえば、前者の51%は自国内であれば転勤は構わないと回答している。一方ハイパフォーマーの場合、同じ州や地域であれば転勤すると答えた人は42%、海外勤務でもよい人は37%、他の大陸でもよい人は28%であった。

 これは意外な結果である。有能人材向けの仕事やプログラムの多くは、転勤を伴うものであり、それが本人のメリットにもなるとされているからだ。ハイパフォーマーをつなぎ留めたければ、移住を伴う配置換えよりも、現在の職場でいかに多くの柔軟性を与えられるかを考えるべきである。転勤しなくてもキャリアアップできる道筋がなくてはならない。そして現在の勤務地でグローバルなバーチャルチームのリーダーを務める機会を与え、短期間で幅広い経験を積めるようにすることが重要だ。

 ハイパフォーマーへの配慮を怠れば、彼ら彼女らはさらなる挑戦や成長、報酬を求めて別の仕事を探す。そして競合他社に喜んで受け入れられるだろう。最も優秀な従業員を会社に留めるには、その欲求と要望に応えなければならないのだ。


HBR.ORG原文:What High Performers Want at Work November 18, 2014

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キャリー・ウィリヤード(Karie Willyerd)
サクセスファクターズのラーニング&ソーシャルアダプション部門シニア・バイスプレジデント。同社はSAPの子会社で、人材マネジメントのソフトウェアを提供する。共著にThe 2020 Workplaceがある。過去に複数の多国籍企業でCTO(チーフ・タレント・オフィサー)およびCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)を歴任。