例えば、今まで使っていた化粧水がなんとなく肌に合わなくなってきていると感じた瞬間や、友人の家で出されたコーヒーがとてもおいしいと感じた瞬間、ということもあるだろう。あるいは、オムツ替えをしているときに、赤ちゃんが少しだけ不快そうな表情になったときかもしれない。
そして今、このような生活者にとって「知りたい」と感じる瞬間から、実際に「調べる」という行動にスムーズに展開できるようになった。スマートフォンの普及によって、その瞬間が訪れた時に、「インターネット検索行動」がTVのチャンネルを選ぶのと同じような感覚で無意識にできるようになったからだ。
このように、「気づく」から「調べる」がほぼ同時多発的に行われるようになった結果、オンライン上での検索行動は、マーケターにとって、情報確認の場へだけではなく、ブランド体験の場へと誘導することも可能になってきている。なぜなら、この手のカジュアルな検索の場合、価格、スペック、販売店などの特定情報を知りたいわけでなく、その商品、ブランドが自分に合っているか、あるいは自分の生活を変えてくれるのか、といった定性的な価値を感覚的に確認したい場合も多いからだ。
この時、検索結果にそのような定性的なブランド価値を提供できれば、それが生活者にとっては、先ほど説明した「最初の真実の瞬間」(First Moment of Truth) のさらに前に起こる本当の真実の瞬間、つまり「Zero Moment of Truth」ということになる。
検索行動は、購買にどのような影響を及ぼすか?
このような話をすると、確かに人生に数回しか購入の機会がない、いわゆる比較的高額なカテゴリーでは事前の情報探索行動が頻繁に発生するが、1年に何度も購入する機会が多く、比較的低価格なカテゴリーについては当てはまらないのではないか?という声も出てくるだろう。
そこで、購入頻度の多いカテゴリーに属するブランドやそれに関連する検索が、どれだけ該当する商品の購入に影響しているか、調査会社が保有する消費者パネルデータ(注2)を使って以下の手順で確かめることにした。
この消費者パネルは、同一人物の購買行動を数年分に渡って集積しているものであり、かつ、パネリスト一人ひとりのオンライン検索行動が紐づけられたデータとなっているものである(分析に活用したデータの期間は2013年10から2014年9月までの1年間)。
具体的な分析手順は下記である。