トークイベントの魅力は、登壇者同士のやり取りから生まれる、新しい知の創出である。僧侶と研究者、アーティストという異質の組み合わせのトークイベントに参加した。

 

テーマはあるが、あってないようなもの

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左から谷澤邦彦氏、藤田一照氏、石川善樹氏、モデレータのホワイトシップ・長谷部貴美氏

 講演会とトークショー。「語り」を中心としたイベントの形式にはさまざまあり、以前は講演会が好きでしたが、最近はトークショーの方に惹かれています。その理由は、対話による知の創発が生まれる瞬間を直接見ることができるからです。

 先日、アートを社会に結びつける活動をしているホワイトシップが開催したトークイベントでは、まさに対話の醍醐味を実感することができました。

 イベントに登壇された3人は、僧侶の藤田一照さん、予防医学の研究者、石川善樹さん、アーティストの谷澤邦彦さん。宗教家と研究者とアーティストが語り合うテーマは、「アートが与えるもの〜ココロ・カラダ・クラシ」というものでしたが、あってないようなもの。事前に話しの構成をつくり、打ち合わせをされていたそうですが、それぞれの自己紹介から、シナリオは早々に崩れます。しかし崩れ方が、シナリオ以上の効果を引き出したのではないでしょうか。

 藤田さんは大学院の2年まで自分が僧侶になるなど思ったこともなかった。当時は、「宇宙を知りたい」ということがきかっけで、それが「自分を知りたい」に変化していったそうです。

 石川さんは、「どうすれば、人はよりよく生きることができるか」をライフワークにされています。ここで「どうすれば」と「How」で考えることが重要で、「Why」で考えると暗くなる。「よりよく」は直感でしかありえないが、それは自分の不思議を客観視することと言います。

 谷澤さんは、「なぜ人は絵を描くのか」を追求していくと、「自由」に行きつく。人に見てもらいたいから、あるいは表現したいから描くのではなく、むしろ描くことからコミュニケーションは生まれ、それをつくり出すのがアートだと言います。