2005年、W. チャン・キム、レネ・モボルニュ両教授が『ブルー・オーシャン戦略』を発表した。新しいコンセプトが生まれては消えるビジネスの世界で、この書籍はいまだに「現役」である。しかしながら、アカデミックの世界ではまったくと言ってよいほど評価されていないのも事実である。なぜ、経営学の世界とビジネスの世界でこれほどまでに評価が分かれるのか。その理由をひも解きながら、ブルー・オーシャン戦略の本当の価値に迫る。

ブルー・オーシャン戦略の骨格を築いた3つの論文

 2005年にフランスのビジネススクールINSEADのW. チャン・キム、レネ・モボルニュ両教授が著したBlue Ocean Strategy[注1](ブルー・オーシャン戦略)は、世界的なベストセラーになった。多くの企業が「血みどろのレッド・オーシャン」で戦っていると指摘し、それから抜け出すために新しい市場、つまり「ブルー・オーシャン」に漕ぎ出すことの必要性を説いた本書は、「解説本」まで出るほどである。

 2005年といえば、日本でも100円ショップがもてはやされ、家電やPCのコモディティ化も加速し、牛丼業界は値下げ戦争を繰り広げていた時代である。消耗戦に疲れた多くの経営者、へとへとになった社員にとっては、「目からうろこが落ちる」思いであったことだろう。多くのベストセラー、特に経営書のそれは、1、2年で忘れられることも多い中、本書はいまだに「現役」である。INSEAD(シンガポール)の友人と話をすると、ブルー・オーシャン戦略はいまだにINSEADの企業研修の「看板」になっているという。