人工知能は、あらゆる産業の自動化を進める

――人工知能の進化は社会にどのような影響を及ぼすのでしょう。

 最近、自動運転技術が注目されていますが、建設、食品加工、農業など、人が作業する必要があった分野でも自動化が進むでしょう。これまでは建設作業現場は現場ごとの違いが大きく、どこにどんな材料、道具が置かれているかも日々変わってしまうので、人の認識なしに機械による自動化はできませんでした。食品加工も同様です。それぞれ異なるエビの形を認識できなければ、機械で皮をむくことができません。だから、エビの皮むきは人手に頼ってきました。農業分野でも、色や形が異なるさまざまな作物の収穫時期の見極めなど、同様の問題が自動化を阻んできました。しかし、人工知能を持つロボットが作業状況や、食品や作物の形状を正確に認識すれば、人に代わって作業をできるようになります。

  さらに、不審な行動をしている人物、交通違反を認識すれば、防犯や交通事故防止への貢献につながります。言語の認識が意味理解まで進み、イメージをしてから翻訳できるようになれば、実用レベルの自動翻訳機が実現するはずで、語学が苦手な人が多い日本人に多大な恩恵をもたらすことになるでしょう。

――自動化はどこまで進むのでしょうか。

 人工知能は最適なやり方を見つけて目的を達成する道具です。自動化を進める前提として、人間が人工知能に目的を与える必要があります。弁当のそれぞれのおかずを認識できても、どのように詰めるのかは人が決めなければなりません。自動運転も、スピードと安全性はトレードオフの関係になるので、そのバランス、落としどころをどのあたりに設定するのかは人が決める部分として残ると思います。

――自動化が進むには、どれくらいの期間が必要ですか。

 身体を動かして働く運動系の仕事はこれから自動化が急速に進んでいくと思います。ディープラーニング技術による認識、ロボット技術による行動といった基本的な要素はすでに出そろっています。その精度を上げて、実用レベルにどう組み込んでいくかという段階なので、5年から10年のスパンで自動化は顕著な進歩が見られるようになるでしょう。自動化の進展した社会、産業の到来は、それほど遠い未来のことではないと思います。