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企業の成功は人材にかかっている
世のCEOたちは、成功は人材にかかっていることを心得ている。価値を生み出すのは事業ではなく人材なのである。しかし、大多数の企業の内側をのぞくと、CEOはCHRO(最高人事責任者)や人事職能全般と距離があり、往々にして彼らに不満を抱いている、という実情が見えてくる。マッキンゼー・アンド・カンパニーとカンファレンス・ボードの調査では毎回、世界中のCEOが人的資本を最大の課題と見なす一方、社内の全職能を重要な順に並べると人事は8ないし9番目にすぎないと考えている、という結果が出る。このままではいけない。
人事部門はいまこそ、過去数十年における財務部門と同じような飛躍を遂げて、CEOの真のパートナーにならなくてはいけない。CFOが資金を調達、配分してCEOの采配を助けるように、CHROは人材、特に核となる人材を育成、配置し、組織の活力や熱意を引き出すことによって、CEOを補佐すべきである。そして、人的資本のマネジメントは、財務資本のマネジメントが1980年代に獲得したのと同等の優先度を与えられるべきだ。80年代といえば、「スーパーCFO」の時代、そして競争力向上を目的とした大がかりなリストラクチャリングが幕を開けた頃である。
CEOはCHROについて、「管理業務に忙殺されて他の仕事がおろそかになっている」「事業を理解していない」といった不満をこぼすかもしれない。しかし、ここではっきりさせたい点がある。人事部門の重要度を引き上げて、CHROを自身の戦略パートナーにするうえでの障害を取り除くのは、CEOの役割なのだ。財務職能に単なる経理・会計に留まらない重要性を持たせたのは、突き詰めればCEOである。営業に特化した部門の役割を拡大してマーケティング職能を生み出したのも、やはりCEOである。