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業界大手には模倣が難しい強みがある
大企業のCEOたちは、内部成長によって利益を拡大させることがいかに難しいか、我々によく愚痴をこぼす。彼らは、自分たちが新規参入者の餌食になるのは時間の問題ではないかと懸念し、確実な成長を遂げるには、新たな市場や地域に進出したり、企業買収したりする必要があると考える。
このような考え方はばかばかしく、また戦略としても近視眼的である。実は、業界の大手企業は、既存顧客に関する情報を分析・活用するだけで成長できる。これら大企業には、すでにほぼあらゆる種類の顧客に関するデータがそろっている。
問題は、ほとんどの企業が、製品と地盤を守ることを戦略の中心に据えていることである。しかし、焦点を当てるべきは、新規参入者(ニュー・カマー)が市場を侵略する際のターゲット、すなわち「顧客セグメント」である。
もしあなたが大企業の経営者ならば、新規参入者に守りが手薄なところを狙われてはならない。社内データには、どのような侵略者が逆立ちしても手に入れられない莫大な資産が、ほとんど未活用のまま眠っている。これこそ、我々が「既存勢力の優位性」と呼んでいるものである。顧客データが豊富な既存勢力のほうがなぜ有利なのか、その理由は3つある。
・既存勢力はいかなる新規参入者よりも、さまざまな顧客ニーズについて、的確にその本質を把握しているはずである。
・各顧客セグメントの収益性を把握しているという強みを利用して、いちばん儲かる顧客を囲い込むために、賢く資源を投入できるはずである。
・おそらく最も重要な点だが、各顧客セグメントのニーズと収益性に関する知識は、製品の特徴や性能と比べて、模倣される可能性がはるかに低い。
ただし、このような既存勢力ならではの優位性を生かすには、まず頭の切り替えが必要である。具体的には、戦略を構成する基本要素は、製品や地域ではなく、ニーズ別に見た顧客セグメントであることを認識しなければならない。