4つの視点で見る取締役会のイノベーション

 米国企業の取締役会はこの10年間で、株主、株価変動、州政府や連邦政府の圧力を受けて劇的な変化を遂げてきた。10年ぶりに取締役会に出席した者が目にするものの中で、昔と変わらないのは壁紙だけかもしれない。

 独立取締役の選任は任意とされていたが、今日では取締役会の過半数を独立取締役にすることが定められている。会長がCEOを兼任する場合、大半の企業の取締役会(S&P500企業の97%)が筆頭取締役または議長取締役を選任しており、彼らが取締役会の内外でかつてない影響力を発揮している。また、独立取締役がCEO抜きのエグゼクティブセッションを定期的に開催するという比較的新しい慣行も広がっている。株主は報酬委員会の決定事項を見直すことができ、監査委員会メンバーの責務や説明責任は大幅に拡大している。各取締役には、より頻繁に会議に出席し、より多くの時間を経営陣とともに過ごし、みずからが指図を与える企業についていっそう理解を深めることが求められている。

 だが残念なことに、外からの圧力を原動力とする改革は、取締役会が担う経営監督の改善という点ではあまり効果がないことが明らかになっている。コーポレートガバナンスの第一人者として知られる弁護士のマーティ・リプトンが指摘したように、取締役会の改革は「画一的な解決策」の弊害に悩まされている。経営の監督状況を改善するために必要な取り組みは、無理やり組織体制を当てはめたり、取締役会への出席を要請したり、公平中立な人材を登用したりすることだけではない。未公開株式投資会社クレイトン・デュビリア・アンド・ライスの会長兼CEOで、多くの企業で取締役を務めるドナルド J. ゴーゲルは次のように語る。「取締役会のベストプラクティスなら、教会の教理問答書(カテシスム)のようにすらすらと答えることができます。しかし最高の取締役会には、ある種の魔法のような力があるのです」。つまり優れた取締役会は、一つのグループとして並外れた結果を出すことができるのだ。