コーポレートガバナンスの
よりよい仕組みを求めて

 今日、コーポレートガバナンスは企業の取締役会で頻繁に議論されるテーマではあるが、学問研究の対象としては比較的新しい分野だ。起源としては1930年代にアドルフ・バールとガーディナー・ミーンズが行った独創的な研究にまで遡れるが、いまの我々が知るような分野として注目されるようになったのは1970年代に入ってからである。

 とはいえ、コーポレートガバナンスのベストプラクティスはなかなか生まれない。その理由として、縦割りの規制システム、方向性の異なる官と民のつぎはぎの施策、そして何をもって優れたコーポレートガバナンスとするのか、誰もが認める評価基準が存在しないことなどがある。

 また、コーポレートガバナンスに関する議論のあり方も足を引っ張っている。ヒステリックな感情論、株主の権利を主張する一派と経営陣との埋めがたい溝、多くの相反する利益、そして思慮深い議論を閉め出す主流派の縄張り意識──。その結果生まれた現在のコーポレートガバナンスの仕組みは、もしゼロから設計したら誰もそうはつくらなかったであろうというものになってしまっている。この仕組みによって、誰も望まない、時には常識や公の秩序に反する結果さえ生じることもある。