コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、そして「伊藤レポート」が発表されたことは、企業と投資家の関係をグローバル水準に引き上げると期待されている。なぜいま、そのような変化が求められているのか。株主と健全な関係を築き、それを自社の成長に活かすために、企業は何をすべきなのか。東証1部上場企業の経営者であり、投資家の事情にも精通するマネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大氏が、同社における取り組みを交えながら論じる。

自社の経営を強化する

 2015年6月、金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする有識者会議が取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」の適用が始まった。同コード内では、上場企業の行動規範として「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」という5つの基本原則が挙げられている。

 また、それに先んじた2014年2月、機関投資家の行動規範を定めるものとして、金融庁から「『責任ある機関投資家』の諸原則」(以下日本版スチュワードシップ・コード)が公表され、銀行や保険会社、年金機構など、多くの機関投資家がその受け入れを表明している。日本版スチュワードシップ・コードは、大株主である機関投資家が投資先の上場企業をしっかりと監視し、場合によってはその経営判断に異議を唱えるなど、株主としての本来の役割を果たすよう促したものだ。