オリジナルを追い求める幸せは何にも代えがたい

 本書で語られるオリジナルであるための方策は次のようなものだ。既存のものに疑問を持つべきこと、リスクのバランスを取るべきこと。新しいアイデアを受け入れてもらうためのテクニック(発言の仕方や非難を避ける方法)。そして成功の可能性を高めるためのタイミング等々(先陣を切る必要はなく、先延ばしも効果あり)。さらにはオリジナリティを引き出す家庭環境や組織のあり方に話が及び、最後、オリジナリティの邪魔をする感情――恐怖心や他者の無関心――をはねのけるための方法が解説される。

 グラントは、さまざまな事例や調査研究を丁寧に紹介しながら、それを体系的に説明しながら論じていく。時には思わぬ仕掛けを用意していて、実際には存在しない「サニック効果」という言葉をあたかも実在する用語のように解説しながら、「単純接触効果」(繰り返し接触するほど、その対象をより好む現象)の説明に使っていたりする。心理学用語なども多く登場するが、さまざまなエピソードを楽しく読み進めながら理解することができる。オリジナルであることが必要な時代にあって、アイデアや企画が求められるビジネスパーソン、彼らを指導する立場の上司などはもちろん、子どもを導く立場にある親や教師などにも示唆がある一冊と言えよう。

 なお、本書は、「『オリジナルでいる』ことは、幸せにいたる道としては、けっして簡単なものではない。しかし、それを追い求めることの幸せは何にも代えがたいのである」という印象的な言葉で締めくくられている。これは、著者グラント自身の生きていくうえでの信条かもしれない、と感じた。