日本ヒューレット・パッカード主催、本誌協力の「ビジネス・リーダーシップ・フォーラム2016」が9月9日、東京都内で開催された。今回は“キャズム理論”の提唱者として知られる米国の著名経営コンサルタント、ジェフリー・ムーア氏を迎え、「“創造的破壊”の時代。これからのビジネスのあり方を考える」というテーマでセッションを繰り広げた。その内容をダイジェストでお伝えする。

“創造的破壊”に勝ち抜くためには?
ジェフリー・ムーア氏、大いに語る
主催者である日本ヒューレット・パッカード代表取締役 社長執行役員の吉田仁志氏の開会の挨拶に続き、基調講演では早速、ムーア氏が登壇。1991年に発表した著書『キャズム』(原題『Crossing the chasm』)が世界的に注目され、日本でも熱心なファンが多いムーア氏が舞台に上った途端、会場全体は一気に興奮ムードに包まれた。
昨年、米国で『Zone to Win』という著書を上梓したムーア氏は、その内容などをもとに「“創造的破壊”の時代に勝ち抜くために」というテーマで講演を行った。

“創造的破壊”(デジタル・ディスラプション)とは、文字どおりデジタル技術やソリューションの進化とともに、旧来の製品やサービス、ビジネスモデルが、より創造的で斬新なものに置き換えられていく破壊的変化である。世界中のタクシー業者を脅かしている米ウーバーテクノロジーズの配車サービスや、日本でもホテル・旅館業界が、その存在感の高まりに戦々恐々としているエアビーアンドビーの民泊紹介サービスなどがそれに当たる。
こうした“創造的破壊”の動きは、「いくつもの技術革新の波が重なり合うことによって、ますます加速している」とムーア氏は指摘する。
さらに、「クラウドコンピューティングやスマートフォン、ソーシャルネットワークなどの普及によって、新しいビジネスを立ち上げ、運営していくための限界費用はゼロに近づいている。大企業のように莫大なヒト・モノ・カネがなくても、新しいビジネスがたちまち旧来のビジネスに取って代われる時代になっているのである。この“創造的破壊”の波をうまく乗り越えなければ、企業は生き残れなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らした。
では、既存の企業は、どうすれば“創造的破壊”に立ち向かうことができるのか。
それは、「“破壊”への動き俊敏に察知し、CEOの強い決断のもと、優先順位を付けながら経営のリソースを大胆に再配置すること」だとムーア氏は指摘する。