●ストレスと上手に付き合い、燃え尽きを防ぐ方法
人はストレスを抱えると、さまざまな破壊的行動に走る。過食、薬物やアルコールの濫用、力を抜かずに頑張りすぎてしまう、などだ。
医療責任者たちへの調査からわかったのは、ストレスに対処し燃え尽きを防ぐためにEQを活用できるということである。次のような対策を試してみるといいだろう。
1.自分でわざわざストレスを増やさない
あまりにも多くの人が、身体的な反応を伴うほどのストレスを、みずから生み出している。憂鬱になりそうな未来の出来事や出会いを、ただ想像しただけでそうなるのだ。何かをどうしても達成しなければならない人や、完璧主義者ほど、自分でストレスを増やす傾向がある。我々が調査から学んだのは、自分で生み出すプレッシャーについて理解しているリーダーほど、ストレスのレベルをうまくコントロールできるということだ。
ある医療責任者はこう語った。「私のストレスの多くは、長年自分に対して厳しすぎたせいで、みずから招いているものだと気づきました。それが引き起こす問題を悟ったいまでは、自分にプレッシャーをかけ続けないよう自重できています」
2.自分の限界を知る
自分の強みと弱みをしっかり把握していれば、どこで助けを求めるべきかを判断しやすい。我々が調査した医療責任者たちは、臨床医からリーダーの立場への移行が大きなストレスの原因だったと述べている。仕事上の要求が自分の能力を超えていると判断できた人は、1人で難題に立ち向かったりしない。周囲に信頼できるアドバイザーを何人も置いて、助力を求めている。
3.緊張と不安が急激に高まっていると感じたら、深呼吸する
マインドフルネス(目の前の瞬間に意識を集中させることで、惰性から脱却し能動的に気づきを得るプロセス)の実践は、眼前のストレス要因や長期的な困難に対処するうえで有益である。調査対象のうち数人は、ストレス要因に直面したとき、マインドフルネスの手法を使って心拍数と緊張レベルを下げていると述べた。あるリーダーは、マインドフルネスによって「他の解決策に対してオープンになり、頑固さで時間を無駄にすることがなくなる」という。
呼吸に意識を集中するのは、最初は難しいかもしれないが、この注意力は自己コントロールの最たるものであることを覚えておこう。
4.状況の見方を考え直してみる
自分はある状況を、何か大切なものへの脅威だと見ているのか、それとも解決すべき問題だと見ているのか。いま体験しているのが有害なディストレス(distress)なのか、それとも有益なユーストレス(eustress)なのかを見つめ直すことは、ストレスレベルを下げるうえで驚くべき効果をもたらしうる。ある医療責任者は意識の変化をこう説明した。「かつてはただストレスと感じていたものが、いまでは有益なストレスになっています。前向きに解決すべき問題だと捉えるようになったのです」
5.他者の立場になって考えることで、対立を緩和する
他者との対立によるストレスは燃え尽きにつながることが多く、可能であれば対立を和らげるのが得策だ。相手に対する探究心を持ち、質問をし、よく話を聞こう。相手にしっかりと注意を向けて、こちらに伝えようとしているメッセージに集中しよう。相手の立場を理解しようと努めれば、その人から信頼され、こちらから影響を与えやすくなる。
我々がインタビューした1人は、常にこの手法を使っていた。共感を持って話を聞くスキルを磨くことで、同僚との協力関係を強め、支持を得ることができているという。
最近、ある医師が彼のオフィスに飛び込んで来て「すぐにこうしてください、さもないと赤ちゃんたちが死んでしまいます」と言った。ここで防御的な反応を示せば、事態を悪化させる可能性もある。だが彼はしっかりと自分を保ち、医師の立場を理解することに集中した。その対応が対立を緩和し、ストレスの少ない健全な会話に結実した。
心の知能を高め活用することで、自分および他者の燃え尽きを防ぐことができる。ただし、EQを高めるには時間と努力がいることも覚えておこう。自分に対して忍耐強く、寛大で優しくあらねばならない。EQを伸ばすことが新たなストレス要因になるのだけは、誰しも望まないはずだ。
HBR.org原文:Why Some People Get Burned Out and Others Don’t November 23, 2016.