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顧客中心主義:新たな競争優位の源泉
以前であれば、業務運営のスキルが長期的な優位性につながった。無駄の少ない製造を行い、質の高い製品をつくり、優れた流通を実現すれば、競合他社を凌ぐことができた。ところが今日では、これらの能力は競争に加わる前提条件でしかない。新たな競争優位の源泉は、顧客中心主義である。つまり、顧客ニーズを深く理解し、それをうまく満たすことにかけて、他社を圧倒するのである。
これを達成するにはデータが必要である。しかし、せっかく貴重なデータがあっても、宝の持ち腐れでは元も子もない。データから消費者の購買動機についての知見(インサイト)を引き出し、それをもとに戦略を構築する能力が、企業の勝敗を分ける傾向が強まっている。この秘術を身につけるには、組織に革新的な能力が求められ、私たちはそれらを総称して「インサイトエンジン」と呼んでいる。
インサイトエンジンが重要な役割を果たす事実は、戦略コンサルティング会社カンター・フェルメールが中心となって2015年に実施した、世界規模の調査を通して明らかになった。「インサイト2020」(略称i2020)というその調査では、世界各国の1万人を超える経営実務家を対象に、インタビューとアンケートを行った(囲み「インサイト2020の概要」を参照)。この調査から、顧客中心主義をてこに事業成長を促す要因がいくつも見つかったが、その中で最も重要性が高いのは、知見や分析を担う部門に備わるインサイトエンジンだと判明した(部門名は各社で「I&A」〈Insight&Analyticsの略〉「消費者・市場インサイト」「消費者インテリジェンス」などさまざまだが、ここでは簡潔に「インサイト部門」とする)。