エコシステム内でのイノベーションの難しさ

 航空宇宙、エレクトロニクス、化学、ソフトウェア、さらにはグローバルな建設、投資・商業銀行、製造など、現在の数多くの業界では、製品・サービスのシンプルなイノベーションでさえ複雑になりがちである。なぜなら各企業は、相互のつながりが強い有力なステークホルダーで構成されるエコシステムの中で事業をしているからだ。

 携帯電話を例に取ろう。サムスンなりファーウェイなりが新しい電話を売り出す時は、ユーザーだけでなく、モバイルネットワークを保有・管理する通信事業者や、グーグルなどの大手アプリケーションプロバイダーが関わってくる。たとえば、インスタントペイメント(即時決済)はユーザーや通信事業者には魅力的かもしれないが、既存の決済インフラの変更が必要になるため、アプリケーションプロバイダーや小売店には魅力が薄いかもしれない。

 このように多くの関係者が絡み合ったエコシステムにおいては、自社と顧客だけに焦点を当てるわけにはいかない。他のステークホルダーも賛同できる提供価値(バリュープロポジション)が必要になる。だから、成功するイノベーションを見極める作業も非常に複雑になる。