システムを維持するインセンティブを
いかに設計し、機能させるか

ビットコインとブロックチェーン』(アンドレアス M. アントノプロス著、エヌティティ出版)の翻訳者で、この分野に詳しい鳩貝淳一郎氏は、ブロックチェーンの技術解説とともに、適用が試みられている分野を「価値の移転」「履歴の共有」「契約の自動執行」の3領域に整理して、実用可能性を詳述しています。

 これら専門家の論文を読んで、最大の課題と思われるのは、ブロックチェーン関連のシステム全体を維持・運営するインセンティブをいかに設計し、機能させるか、です。

 ブロックチェーン技術が具現化した仮想通貨では、このシステムを維持するマイニング(詳細はDHBR8月号をご参照ください)への報酬を巧みに設計しています。しかし、そこで生まれる仮想通貨に対して、値上がり期待が生まれ、その市場に投機家が加わり、価格の乱高下が起きています。

 仮想通貨のバブルが大きくなって衝撃的なクラッシュが起き、社会に不安が蔓延してしまうと、ブロックチェーン技術の発展に大きな支障となります。

 この分野で世界の流れに遅れることなく、ブロックチェーンの健全な発展を願う人々や企業が集まるコミュニティがいくつか生まれています。その1つの一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)は昨年6月から、ブロックチェーン技術のエンジニアを育成する教育サービスを提供するなど技術の普及に取り組んでいます。「協会加盟企業は当初はIT企業や金融機関が中心でしたが、徐々に産業界全体に広がっています」と事務局長の長沼史宏氏は言います。

 ブロックチェーン技術を活用したプロジェクト等の実証実験は、金融業界や地域通貨などすでに数多く、「今年度中には実際の事業としての展開が始まるのではないか」と長沼氏は見ています。健全な技術の発展と事業展開が望まれます。(編集長・大坪亮)