ビットコインなどの仮想通貨やブロックチェーン技術の概念が社会に浸透しつつある。一方、仮想通貨の値上がりを期待しての投機も隆盛だ。それがバブルとなって、いずれクラッシュし、イノベーションの発展に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
分散型仮想通貨が
貨幣としての信頼を得る状態
「ビックカメラ全店でビットコイン決済」、「東電、独大手と電力取引の仲介事業 ブロックチェーン活用」、「仮想通貨、相次ぐ想定外、一瞬で急落・犯罪悪用」、「仮想通貨取引所を審査 金融庁、利用者保護体制など」……7月10~12日の3日間に日本経済新聞に載った仮想通貨やブロックチェーンに関する見出しの一部です。
ビットコインなどの仮想通貨を支える基幹技術が、ブロックチェーン技術です。こうした連日の新聞記事を読むと、少しずつ社会に浸透している感じがします。
しかし、ここに挙げた見出しにある通り、良いことばかりではありません。価値の乱高下や悪用関連の記事が多いということは、仮想通貨がいろいろな意味でリスクが高いことを示しています。
ブロックチェーン技術は、1990年代以降にインターネットが社会を変えたのと同じくらいに影響力がありそうな画期的イノベーションです。ただし、実際に社会で活用されるには課題が多くあります。
7月10日(月)発売の『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)8月号の特集「ブロックチェーンの衝撃」では、斯界の権威が、仮想通貨やブロックチェーンの可能性と課題を分析しています。
国立情報学研究所准教授の岡田仁志氏は、現時点での仮想通貨の不完全性をズバリ指摘します。
「限られたコミュニティの範囲内においては、分散型仮想通貨を無条件に受領するという約束が成立している。そこに属する人々は、分散型仮想通貨の様式美に信頼を置き、ブロックチェーンと呼ばれる台帳に金銭的価値が化体する将来を見通しているかもしれない。しかしながら、分散型仮想通貨が貨幣としての信頼を得る状態というのは、社会的な約束としてブロックチェーンに価値が化体したと扱われる状態を指す。現状においては少なくとも、そのような兆しは見られないと考えるのが自然であろうか。」
コンピュータサイエンスの第一人者、ソニーコンピュータサイエンス研究所社長の北野宏明氏は、ブロックチェーン技術を精緻に評価して、理想通りには行かない限界をネットワーク理論や現実問題から指摘します。と同時に、その限界は人工知能(AI)の進歩により突破できるかもしれないことを示します。