新経営戦略「GPSモデル」の本質的意義

 VUCAで象徴されるように、現代のビジネス環境は、変化が激しく、不安定かつ不確実だといわれる。このようなビジネス環境においては、従来の競争戦略はもはや通用しない。破壊的なスピードで、徹底的に透明性を磨き上げることで、競争環境を勝ち抜いていくことが求められる。

 社会課題を的確にとらえ、その解決を通じて自社の事業を拡大し、企業価値を高めていくための戦略立案がより重要になる。政府機関や投資家なども、その意義を理解し始めており、共通価値の創造を通じて、企業の持続的成長につなげていく期待が高まっている。

 これを実現する経営戦略のあり方として、アクセンチュアは「GPSモデル」を提唱している。これは、従来の経営戦略で議論されてきた「成長(Growth)」と「利益(Profitability)」に「サステナビリティ(Sustainability)」を加え、これら3つの要素を同時に追求することにより、迅速な対応力のある企業競争力を獲得すると同時に企業の持続的な成長を実現する。

出所:アクセンチュア

 実際に「GPSモデル」を企業経営に取り入れるには、下記の問いに答える必要がある。

■イノベーションによる成長(Innovation to Grow):持続的な成長の観点から、重要な社会課題(=ニーズ)は何か。新しい成長やイノベーションの機会は何か。自社の製品・サービスを通じて、どのような価値を誰にどれだけ提供できるか。

■信頼される企業(Trusted Company):顧客・ステークホルダーの期待は何か。従来よりも格段の透明性が求められるなか、そうした期待に応えるには、どのようなリスクや機会が存在するか。

■成長の原動力(Fuel for Growth):上記を実現するために、持続可能で強靭な運用モデルをどのように構築すればよいか。必要となるケイパビリティは何か。そのためのガバナンスおよび運用体制をどう構築すればよいか。

後編では、「GPSモデル」の実践事例を取り上げ、その意義について議論する。

>> 「新時代の競争戦略-GPSモデル 共有価値共創の実践に向けて」(後編)はこちら

 

(写真左)
海老原 城一(えびはら・じょういち) アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 サステナビリティグループ統括 マネジング・ディレクター
東京大学卒業後、1999年アクセンチュア入社。公共事業体の戦略立案や、スマートシティ―の構想立案に多数従事。東日本大震災以降は自社の復興支援プロジェクトの責任者を務める。
(写真中央)
髙橋 信吾(たかはし・しんご) アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 サステナビリティグループ シニア・マネジャー
京都大学大学院、ブリティッシュコロンビア大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、2016年にアクセンチュア参画。環境・サステナビリティ分野を中心に調査・コンサルティング業務に多数従事。
(写真右)
齋藤 倫玲(さいとう・りんれい) アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 サステナビリティグループ マネジャー
フェリス女学院大学卒。2008年アクセンチュア入社。現在同社戦略コンサルティング本部マネジャー。サステナビリティ分野のエキスパートとして、幅広い業界を対象に事業戦略立案、新規事業開発を支援。