フィンテック企業にみられる
5つの分類
――海外では今、どのような金融イノベーションが起きているのでしょうか。
瀧川 ユニコーンとなったフィンテック企業の特徴は5タイプあります(図4)。

1つは、金融インフラが整備されておらずアンバンクド層(銀行口座を持たない人々)を多く抱える地域(主に途上国)で、非金融機関が持つ既存チャネルとテクノロジーとの組み合わせが、社会ニーズを一気呵成に満たすタイプです。(①アンバンクド層への金融包摂の推進)。

アクセンチュア
戦略コンサルティング本部 マネジャー
東京工業大学工学部卒業後、2008年アクセンチュア入社。メガバンク、証券、生命保険、クレジットカードなど、多数の金融機関において事業戦略・テクノロジー戦略の立案、新規事業立案、イノベーション組織立ち上げ、企業風土改革、システム構造改革などに従事。
例えば、口座・クレジットカード普及率の低いインドでは、Paytmというモバイルウォレットサービスが大きく成長しています。既に普及しているモバイルを活用した様々なシーンでの決済や、既存のATM・小規模小売店チャネルでのデポジットを可能にすることで、5.7B$の出資獲得に成功しました。同様に、P2Pレンディングサービスを提供する中国のLu.comは、中国最大の保険会社Ping An Insuranceの出資を後ろ盾にサービスの信頼性を向上させ、貸し手のつかない小規模事業者への資金ニーズマッチングビジネスを拡大しています。
2つ目は、既に金融サービスが行き渡っている地域(主に先進国)で、これまで採算性の見込めなかった顧客(中小企業・低所得・ニッチ層)に対して、非金融機関が持つ情報を活用した与信精度の向上や、デジタルを活用したオペレーションコストの圧倒的な低減により、従来よりも低い金利・手数料での金融サービスの提供を可能とするタイプです。(②中小企業・低所得・ニッチ層への金融包摂の推進)。
この中で筆頭に挙げられる、決済ソリューションを提供する米国のStripeは、130通貨以上に対応した決済機能をシンプルな実装で自社サイトに搭載でき、UIのデザインも美しく、手数料も比較的安いため、オンライン事業者への高い付加価値の提供が評価され、9.2B$という巨額の出資を獲得しています。また、P2Pレンディングを提供する米SoFiは、スタンフォード大学やハーバード大学といったデフォルトリスクの低い学校を選択し、同大学の学生(借りる側)と卒業生(投資する側)をマッチングすることで、安価な利率のローン仲介を実現しています。
3つめは、デジタルを用いた低コストな金融基盤への抜本的刷新によりデファクト化を狙うことが可能なビジネスです(③金融機能のエンハンス)。
ここでは、世界最大級のビットコイン向けオンラインウォレットを提供する米Coinbaseや、国際送金マッチングサービスを手掛ける米TransferWiseが大きく成長しています。いずれも、従来の銀行よりも格安の手数料による金融サービス提供を可能としています。