――CoinbaseやTransferWiseのサービスは、金融機関からすると既存ビジネスを破壊する脅威になるのでは。

村上 たしかに一時的にはそうかもしれませんが、一方でうまく活用すれば、サービスを飛躍的に向上させることができます。とくに送金系サービスについては、自社に組み込んでサービスを強化したいという思いが強いと思います。

森 健太郎
アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
金融サービス統括 マネジング・ディレクター

一橋大学経済学部卒業後、1997年富士銀行入行、2003年アクセンチュア入社。戦略コンサルティング本部に所属し、メガバンク、政府系金融機関、地方銀行、証券、保険など、多数の金融機関において事業戦略、新規事業立案、M&A、営業改革、業務改革、マーケティングアナリティクス、基幹系・情報系システム構想立案などに従事。

 日本の金融機関は、これらの分野での取組強化余地があるのではないかと我々は考えています。特にインフラ機能面におけるコストの抜本的な改革など、本質的な金融機能への取り込み余地が大きいと考えます。いわゆる基幹系機能といわれる領域にどこまで踏み込めるかが日本の金融機関が抜本的に変われるかどうかのポイントになります。既存ビジネスを守るのではなく、フィンテックを活用し、低コストで利便性を高めたビジネスでいかにスピーディに大きなシェアを握るか。この勝負で誰が覇権をとるかが決まるでしょう。

 同様のサービスがたくさんある中で、例えばCoinbaseのように先行して大きなシェアをとることで、同社のサービスを利用している人が増えれば増えるほど利便性は高まり、経済的なメリットも広がっていくような動きというのは、今後様々な領域で見られるようになると予想します。いかに早く大きなシェアを押さえられるかが重要になります。

――続いて、海外で起きている金融イノベーションとして、残り2つはどのようなタイプのビジネスで起きているのでしょうか。

瀧川 4つめは、金融機能をアグリゲーションした上で、更に本来機能の付加価値を高めるサービスを加えることで顧客獲得を目指すタイプです(④高付加価値な金融アグリゲーション)。

 例えば、Zenefitsはオンライン保険比較・購入サイトを運営していますが、保険の仲介だけでなく、保険商品を購入した中小企業向けに、給与計算・支払い、社員福利厚生、勤怠管理等の人事管理サービスをSaaS(インターネット経由で必要な機能を利用する仕組み)で無料提供しています。

 そして5つめは、社会課題解決に向けたフィンテック活用を国が支援し、新たな社会インフラを構築するタイプです(⑤官・民協業による社会課題解決)。

 スウェーデンでは社会コストの削減を目指して、店・交通機関等のあらゆる場所でのキャッシュレス化を推進していますが、Klarnaという企業はその施策をサポートする総合的決済ソリューション(与信・融資・決済)を提供しています。