エージェンシー理論の問題を
指摘したハーバード大学の重鎮

 また、GEはソフトウェア事業の能力を短期間で急激に伸ばし、従来のハードウェア事業と融合することで付加価値を創造しました。その結果、大量の社員が新たに入社しましたが、彼らと既存の社員をフェアに評価・管理を行うために導入したのが、第3論文で詳述する「アナリティクスによるGE式人材管理」です。

 各社員の職歴や特性を把握して必要な研修を行い、仕事とマッチングするシステムは今後、多くの企業で普及していくと思われます。執筆者のスティーブン・プロケッシュ氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・エディターで、これまでもGEのクロトンビル研究所での「リーダーシップ・イノベーション・アンド・グロース」(LIG)という研修などについての論考をまとめています。

 そのLIGを受講して、チーム重視のイメルト氏のマネジメントを実感してきたGEジャパン社長、熊谷昭彦氏にインタビューして、実際の変革はどのようなものだったのかをまとめたのが、特集4番目の論考「GEジャパンはローカルから変革を担う」です。

 GEジャパンは、新興国の中国やインドでのGEとは異なる次元で、競争優位を発揮しています。東京・日野市のヘルスケア工場が、世界に400以上もあるGEの工場の中で最も高い評価を得るなど、熊谷氏には具体的な施策の話を語って頂きました。

 1896年に始まった株価指数「ダウ工業株平均」の構成銘柄で、今日まで採用され続けている唯一の企業が、GEです。なぜGEは長期間、世界のトップ企業であり得るのか。その理由が、慶應義塾大学准教授の琴坂将広氏の論文「GE:変革を続ける経営組織」を読むとわかります。

 125年間のGEの歴史と、その間の経済の流れ、そして経営理論の相関を分析したものです。GEの経営者は、「長期的な視点に立って将来の変化を先取りし、自己否定を繰り返しながら組織と戦略を進化させてきた」のです。これは、まさにイメルト氏の変革そのものです。

 イメルト氏の変革の成否は将来判明するわけですが、2017年7~9月期の業績は純利益で前年比10%減と芳しくなく、新CEOのジョン・フラナリー氏はさらなる変革を表明し、11月13日に今後の経営戦略を発表する予定です。物言う株主(アクティビスト)を取締役会に入れたことでも注目されていますが、今号の巻頭論文では、そうした株主と経営者の関係について新たな視点を提示しています。

 その論文「健全な資本主義のためのコーポレートガバナンス」は、「経営者の使命は株主価値の最大化」としてきたエージェンシー理論の問題点を指摘し、それに代わる企業中心の理論を学界の重鎮が提示しています。長期的経営を支持する論理で、企業統治の流れに周回遅れの日本企業は拙速に走る前に参考にすべき論文です。巻頭論文を読まれた後、特集を読み返していただくと、新たな発見があるかと思います。(編集長・大坪亮)