多くのビジネスパーソンに読んで頂きたいゼネラル・エレクトリック(GE)の前CEO兼会長のジェフリー・イメルト氏の手記。日本企業が生き残るためにどう行動すべきか、の指針になります。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』12月号は「GE:変わり続ける経営」を特集しました。

ジェフリー・イメルト氏の
苦悩と失敗談を交えた肉声

 今号は特集の1番目、GEの前CEO兼会長ジェフリー・イメルト氏の手記が圧巻です(すべての掲載論考がお薦めなのですが)。在任16年間における意思決定の過程とその理由、そこから得た教訓が、苦悩と失敗談を交えた肉声として表されています。

 翻訳が出来上がった第1稿から10回以上読み返していますが、都度、新たな発見があります。前回読んだ時とは違う文に、価値を見出すのです。イメルト氏が実行したことを端的に書いているのは、手記の1ぺージ目の第3段落です。引用します。

「GEは過去16年間、創業以来最も重要な変革を経験してきた。かつては典型的なコングロマリットだった。しかし、いまや『創業125年目のスタートアップ』と呼ばれ、IoTの未来を決めるデジタル・インダストリアル・カンパニーである。変革はGEの遺伝子に刻み込まれている。いま競争しているのは、将来の課題を解決するためである。『自社の将来はみずから決める』という決意があるからこそ、生き抜いてきた」

 以上の表現が大げさではないことが、読み進めていくとわかります。この文章の後に、「戦略、事業ポートフォリオ、グローバル戦略、人材の採用と育成、社風を大胆に変革してきた」と続きます。あらゆることを変革したような表現ですが、実際そのようなのです。

「前門の虎、後門の狼」の例えのように、グーグルやフェイスブックなどネットベンチャーが隆盛する一方、中国やインドなど新興国の企業から追い上げられる構図の中で、GEはハードウェアとソフトウェアの能力を組み合わせて新たな価値を生み出すデジタル・インダストリアル・カンパニーに転換するわけです。「GEをテクノロジー企業として再構築し、R&D投資を2倍超に増やした」と書かれていますが、状況は日本の製造企業にも当てはまり、GEの変革は大いに参考になると思います。

 本特集は、イメルト氏の手記を受けて、いくつかの視点からその変革を分析し、他の企業への活用を探ります。グローバル企業ではローカル事業とグローバル事業の調整が難題ですが、GEが設立した組織、グローバル・グロース・オーガナイゼーション(GGO)は、創造的摩擦を起こしながら問題を解決していきます。その方法を、ハーバード・ビジネス・スクールのランジェイ・グラティ教授が特集第2論文の「GGO:ローカル事業育成の戦略組織」で論評しています。