ビジネス倫理にまつわる3つの問題

 1990年代を迎えるに当たって、倫理への関心がかつてなく高まっている。金融業界、軍需産業、ペンタゴンにおけるあからさまな職務怠慢、ホワイトハウス、司法省、議会での不適切な行為が、マスメディアで報じられている。

 いまのアメリカ社会は、以前にもまして病んでいるのか。おそらく読者のみなさんはそう思っているのではないか。いや、おそらくそんなことはない。企業の行動規範はずいぶん改善されており、経営者や政治家の倫理も平均すれば高くなってきた。

 かつてマーク・トウェインは「アメリカには、金でどうにかできる最良の上院がある」と皮肉り、また社会批判の先鋒だったアプトン・シンクレアは「アメリカの大企業は悪徳資本家の王国だ」と喝破したが、そのような時代はとうに終わっている。

 しかし、違法行為、倫理にもとる行為が後を絶たない。ただし、悪事を暴露しようという努力もあるため、けっして長続きはしないが──。

 倫理という問題はなぜ、少数の犯罪者や詐欺師にとどまらず、善良そうな人々にも関係するのだろうか。彼ら彼女らは、模範的な家庭生活を送りながら、製品の危険性に関する情報を隠ぺいしたり、組織ぐるみで粉飾決算を繰り返したりする。

 私の見るところ、ビジネス倫理の問題には3つの側面がある。

(1)道徳的な人間としてビジネス・リーダーを育成すること

(2)道徳的な執務環境として企業は大きな影響を及ぼしていること