世界を変える人たち

 2007年夏、アメリカに住む中南米を中心とした出稼ぎ移民の本国への送金サービスを革新した枋迫(とちさこ)篤昌が、日本人として初めてアショカ・フェローに選ばれた。

 東京銀行出身の枋迫は培った金融知識を生かし、銀行口座を持てないばかりに、法外な手数料やさまざまな不便を強いられる移民送金の現状と、その送金を待ちわびる本国の貧困の問題を同時解決しようと試みている。

 端的に言えば、移民送金のニーズに応じた金融サービスを提供し、滞留中の資金を基に送金先の国においてマイクロ・クレジットを提供する、という仕組みだ。

 2003年のスタート以来、事業は拡大を続け、特にこの数年は送金対象国も増え、急成長期を迎えている。

 アショカ・フェローとは、ウィリアム・ドレイトンが創設した社会起業家の発掘・支援を目的とする団体、アショカが支援対象として選んだ優れた社会起業家に対する呼称だ。アショカ・フェローに選ばれることで、アショカの世界的なネットワークを生かした物心両面の支援を得られるばかりか、フェローであるということが確かな信用として働き、一般の投資家からも有望な投資対象と見られるようになる。

 ただし、アショカが求める結果は利益ではない。その事業によって、困難な状況を生む世界そのものを変えることだ。起業家の小さな成功をより大きな社会変化に導くために、アショカは事業の急成長期に支援の手を差し伸べるのだ。

社会起業家とビジネス起業家の違い

編集部(以下色文字):ビジネスの起業家と社会起業家の違いは何でしょうか。

ドレイトン(以下略):98%同じです。ビジネス起業家も社会起業家もビジョンを持ち、それを実行に移す最善の方法を求めるという点では同じです。すべてのことにオープンである精神は、どの世界の起業家にとっても等しく必要です。ほとんどの人は目の前に問題が生じても直視したいとは思いませんが、起業家は目を大きく開けて見ます。そこにチャンスがあると思うからです。