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反射的な援助は逆効果に終わる
2004年12月26日、インドネシアのスマトラ島沖のインド洋で発生した地震とそれに伴う津波が、およそ22万7000人の人命を奪い、170万人に上る被災者が避難を強いられた。これに対して、世界中から130億ドルを超す寄付が寄せられ、史上空前の援助活動が始まった。
民間企業からの反響は前例のないものだった。OCHA(国連人道問題調整事務所)によれば、世界各国の企業や個人から国連に寄せられた寄付は約25億ドルに上り、国連が集めた資金全体の約半分を占めていた。
また、アメリカ商工会議所の報告によれば、アメリカ企業から寄せられた資金は5億6500万ドルを上回った。その内訳は、現金による寄付がおよそ2億7300万ドル、従業員の寄付と同額を企業も拠出するマッチング寄付が7900万ドル、現物による寄付が1億4000万ドル相当、顧客からの寄付が7300万ドルだった。企業トップも従業員も等しく、被害を和らげるために目に見える貢献をしたいと望んだのである。
現金は何にでも利用できるため、援助機関は何より現金の寄付を望んだ。ところが、それに飽き足らず、現物による寄付、通信機器やIT機器の提供、ロジスティックスの専門スタッフやマネジャーの派遣を申し出るグローバル企業が多数に上った。
しかし、このような反射的反応から、民間企業と援助機関の協力体制には、さまざまな欠陥があることが明らかになった。たとえば、だれが、どのような援助を必要としているのか、企業側に伝える包括的なリストがなかった。企業側が提供できる資源とその所在地を把握できる仕組みもなかった。
また、被害がきわめて深刻で、地理的にも広範囲に及び、援助機関が分散して活動しなければならない場合、援助機関は、援助活動の経験が乏しい企業が提供する物資の評価や受け入れを担当するスタッフを確保することができず、現金以外の援助を活用できないまま終わってしまったケースが少なからずあった。
援助機関側は、要請されていない物品を送らないように求めていた。にもかかわらず、各援助機関は、善意の提供者から続々と届く援助物資への対応に忙殺された。スリランカのコロンボ空港の報告によれば、インド洋津波発生から2週間のうちに、航空貨物運送状のない人道支援物資を積んだ貨物輸送機が288便も到着した。
もちろん、なかには必要度の高い物資も含まれていて、それらは信頼できる人道支援機関に引き取られた。しかし、要請されていない不適切な物資、たとえば古着、ベークド・ビーンズ(インゲン豆のトマト・ソース煮)、炭酸飲料などを運んできた航空機が多数あった。それらの物資は空港に山積みされ、倉庫をふさぎ、開封されないまま何カ月間も放置された。