テレワークの目的は生産性、効率性を高めること

――生産性向上のもう1つの視点は何ですか。

 創造性を高め、イノベーションや新たなアイデアにつながる働き方を考えることです。場所や時間にとらわれない働き方を実現するテレワークや、高度プロフェッショナル制度が挙げられます。

――テレワークについては、導入に及び腰の企業も多いと思います。成功のポイントは何ですか。

 これまでテレワーク導入というと、育児や介護、家事などが大変な人に自宅で仕事をしてもらうという発想が多かったと思います。そのほうが通勤による負担も少ないと言われてきました。しかし、労働政策研究・研修機構の調査(2015年)によると、テレワークの効果はそれら以上に仕事の生産性・効率性が向上することにあると半数以上の人が回答しているのです。

 自宅にいると仕事をしているのかどうかわからない、コミュニケーションがとりにくいといった理由から、テレワークは導入しづらい、あるいはワーク・ライフ・バランスをお題目にやむを得ず導入するといった消極的な姿勢では、テレワークは絶対に成功しません。テレワークを従業員の創造性、生産性を高める手段として明確に位置づけるべきなのです。

 ここで重要になるのは、テレワークの生産性と仕事の内容です。米オハイオ大学のグレン・ダッチャー助教の論文によると、テレワークに向くのはタイピングのような単純作業ではなく、創造性を要する仕事だそうです。単純作業は同僚から見られていることで生産性が高まる可能性があり、テレワークでは、職場からの干渉や雑音の遮断により、自律的な働き方が可能になり、集中力を生むという利点が得られるようです。

 ただし、注意したいのは、テレワークによって本人は生産性が上がったと自覚するのですが、一方で、我を忘れて仕事をした結果、長時間労働になりやすいというデメリットも一部で指摘されていることです。

――テレワークに向く人、向かない人などはありますか。

 単純なルーチンワークが得意な人というよりは、一人でいるほうがより集中力を発揮し、創造的な仕事をできる人です。とはいえ、企業としてはだれでもテレワークができる環境を整備し、マネジメント層自らが活用して生産性の向上を実感することが大事です。