ヨーロッパの優良企業研究

 経営が順調であれば、売上げもおのずと上がり、株価も上昇する。しかし、これらをさらに向上できるかどうか、どうすればわかるのだろう。さらに、他社との差別化を生み出している経営慣行を知るには、どうすればよいのだろうか。逆に、そのダメージが目に見えない経営慣行を見極めるには、どのような方法があるのか。

 もちろん、ベンチマーキングは一つの答えだが、高業績企業と低業績企業を比較しても意味はない。この問題を解くには、優良企業をそれ以上に優良な企業と比較しなければならない。

 我々は、まさにそのような比較を試みた。ハンス・ヒンターヒューバー、フランツ・マティスと私は、過去4年間にわたり、8人の研究者を率いて、長い歴史を誇るヨーロッパの優良企業を調査した。我々はこれを「持続的成功企業の調査プロジェクト」(Enduring Success Project)と呼んでいる。

 高業績企業についての調査は、これまでも多くあったが、それらはアメリカ企業を中心としたものだった。代表的な例は、1994年に出版されてベストセラーになったジェームズ・コリンズとジェリー・ポラスの共著『ビジョナリー・カンパニー』[注1]である。

 しかし、こうしたアメリカ偏重の傾向は特に驚くに当たらない。アメリカ企業のデータは比較的内容が充実しており、かつ入手しやすいうえ、アメリカのビジネススクールはマネジメント研究で主導的な地位にあるからだ。実際、ヨーロッパ企業の調査は問題が多く、我々の使用したデータの多くがすぐに入手できなかった。

 我々の目的は、一部の企業が長期にわたり、きわめて高い水準の業績を実現している理由を明らかにすることであった。これらの企業の経験から何を学ぶことができるのか。これらの企業は、他の老舗大企業──これらの企業も事業が成功したからこそ、長きにわたって存続してきたが、際立った業績は実現していない──と比べて、何が違うのか。

 これらの疑問に答えるために、我々は過去50年間を振り返り、高業績を実現した企業グループから優れた事例を選び、その企業を、(できれば同じ国の)同じ業界内で業績は堅実だが、それほど際立っていない他の老舗企業一社と比較した(図表1「グレート・カンパニーとは何か」を参照)。