戦略ポートフォリオを3つの計画期間で管理する

 戦略を立案するに当たって、たいていポートフォリオ[注1]が使われる。「金のなる木」に投資すべきか、それとも「花形」か、あるいは景気循環のどの時点で投資すべきかについて考えるには、投資分析のフレームワークが役に立つ。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーのマーダッド・バガイたちは、1990年代に出版されたThe Alchemy of Growth[注2]のなかで、ポートフォリオ・マネジメントとは、3つの「タイム・ホライゾン」(計画期間)を管理することだと説いた。

 すなわち、ホライゾン1では、その年度における短期的な課題に対処する。ホライゾン2では、次世代に向けた高い成長機会を見つけ、ここに着手し、ホライゾン3では、新規事業の種をまき、長期的な成長を目指してインフラを整える。

 タイム・ホライゾンという考え方は、事業の長期的成長を目指すうえで、とりわけ重要である。経営陣は、賢い農夫が今年の作物を収穫し、来年のために土地を耕し、将来のために新しい作物を育てるように、さまざまなことを同時並行で進める。そのため、市場の変化にふいを突かれたりすると、ホライゾン3のプロジェクトへの投資が不十分だったと考える。しかし、本当の原因はそうではない。

 これまでの20年間、IT業界は重要な教訓を学んだ。この業界の長期計画は、他の業界のそれより期間が短い。AT&T、ディジタル・イクイップメント[注3]、イーストマン・コダック、ポラロイド、シリコングラフィックス、サン・マイクロシステムズ、ワング・ラボラトリーズ(現ゲトロニクス・ワング)、ゼロックスなどが、過去20年の間に有望な技術の将来性を見誤った理由について考えてみよう。

 これらの企業は、何も好き好んで将来有望なR&D活動を放棄したわけではない。いずれも長期的視点に立って投資し、賢明な選択を下した企業も多い。ところが一社として、この長期投資の成果にあずかることができなかった。言い換えれば、ホライゾン3からホライゾン2を経て、ホライゾン1へと、長期投資の種を刈り取ることができなかった。

 問題はホライゾン2にある。あなたの会社も、ホライゾン2というブラックボックスに悩まされてはいないだろうか。次世代の製品や技術が救世主となることを願いながら──いつでも手が届きそうなのに、永久に手が届かない──時代遅れの投資ポートフォリオに依存してはいまいか。そうであれば、あなたの会社は危機的状況にある。その原因を早急に突き止めなければならない。

 すでにその原因を特定し、それが有望なイノベーションに壊滅的なダメージを与えないよう、しかるべき対策を講じている企業もある。本稿では、有望な技術インフラの発展と永続のために、シスコシステムズが実践したアプローチを紹介する。その前に、このようなアプローチを必要とする共通の問題について考察してみたい。