●個人的になる

 大型の産業用機械メーカー、バリー=ウェーミラーのCEOであり、Everybody Matters(未訳)の著者でもあるボブ・チャップマンは、社内に人としての魅力あるリーダーシップを根づかせる努力を惜しまない。いかなる決定も、それが従業員に影響を与える場合、チャップマンは次のように自問する。「もし私の子どもや両親、親友がここで働いていたとしたら、彼らはこの決定をどう思うだろうか?」と。

 チャップマンはこのように、あらゆる経営判断を個人的な質問に置き換える。自分のステータスや権限に惑わされないよう、課題を戦術的領域から情緒的領域へと移行するのである。

 部下たちに影響を与える決定を下すときは、チャップマンと同じようにしてみよう。部下たちの立場に立ち、彼らを家族や友人だと思って考えてみるとよい。

 ●自分を知る

 リーダーシップのパイオニア、ピーター・ドラッカーは言った。「自分のことを管理できなければ、他者を管理することなどできない」

 筆者らは最近、ある銀行のCEOが、自分をよりよく知ることで、チームのエンゲージメントとパフォーマンスを大幅に高めることができた事例を紹介した。リーダーシップは、みずからを理解し、自分自身を導くことから始まると示す好例である。

 自分自身を理解できれば、部下たちへの理解もより深まり、彼らの立場になって考えることができる。それが、内因的なモチベーションを高めることにつながるのだ。

 優れたリーダーシップは、自分を理解することから始まる。そして、自分を理解するためには、マインドフルネスが非常に有効だ。

 ●無私になる

 マッキンゼーのグローバル・マネージング・ディレクターであるドミニク・バートンは、優れたリーダーシップの基盤になるのは無私であることだ、という。リーダーシップにおいて大切なのは、あなた自身ではなく、あなたが率いている人々と組織だからである。

 無私になれれば、みずからの利益を度外視し、他者の長期的利益を考慮することができる。ただし無私とは、他人にいいように利用され、自分の主張をしないことではない。無私であるためにはむしろ、自信と、自分を大切にする態度が必要なのだ。

 部下たちを率いるとき、自分が利己的でないかをチェックする簡単な方法がある。何らかの決定を行う際、次のように自問して、自分のモチベーションを確認してみよう。「この決定は、自分の個人的利益のために行うのか、それとも他者の利益のために行うのか」

 ●人を思いやる

 思いやりとは、他者を幸福にしようとする気持ちである。あなたに思いやりのある上司に恵まれた経験があるなら、それがどういうことかわかるはずだ。そういう人は、あなたを守ってくれる。あなたの利益を気にかけてくれる。だから安心でき、信頼されていると感じ、誠実かつ意欲的になれる。

 ことリーダーシップにおいて、思いやりに勝るものはない。思いやりは万国共通であり、どこでも、誰にでも理解してもらえる。

 より思いやり深いリーダーシップを手に入れたいなら、誰かと仕事するときはいつも、次のように自問することを習慣づけるとよい。「この人がよりよい1日を過ごせるよう手助けするには、どうすればいいだろうか」


HBR.ORG原文: Why Do So Many Managers Forget They’re Human Beings? January 29, 2018.

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ラスムス・フーガード(Rasmus Hougaard)
グローバルなリーダーシップと組織の発展を支援する企業、ポテンシャル・プロジェクトの創設者兼マネージングディレクター。クライアントには、マイクロソフト、アクセンチュア、シスコほか、数百の組織がある。2018年3月、HBR Pressより2作目の著書、The Mind of the Leaderを出版予定。

ジャクリーン・カーター(Jacqueline Carter)
ポテンシャル・プロジェクトのパートナー兼北米ディレクター。ラスムス・フーガードとの共著に、One Second AheadThe Mind of the Leader(以上、未訳)がある。

 

ヴィンス・ブリュワートン(Vince Brewerton)
ポテンシャル・プロジェクトの組織ストラテジストで、カナダ担当ディレクター。リーダーとそのチームが心のトレーニングを積むことで、パフォーマンスを高め、健康で満足できる状態を保てるようサポートしている。