昨今、社員に在宅勤務を認める企業が増えてきたが、相手の顔が見えないコミュニケーションは誤解やトラブルも生じやすい。筆者らによると、物理的距離、運営上の距離、心の距離という3つの距離があることがその要因だが、特に心の距離を埋めることに注力すべきだという。本記事では、そのための5つの方法が示される。


 リモートチームのコミュニケーションは、いつもスムーズにいくとは限らない。こんな経験はないだろうか。

 午後10時、顧問弁護士が同僚から携帯メッセージを受信する。所定時間以降の業務メッセージの送り方にプロトコルはないのかと思う(何度そう考えたことか)。

 

 ある広告会社幹部は、クライアントを長時間の酒席で接待した後、上司からのメールを開封した。すると、期日通りに経費精算を済ませるようにと記されていた。上司のマイクロマネジメントにうんざりして、つい頭に浮かんだままを書いて返信してしまう。

 

 週1回の電話会議で、リモートチームの1人が悩んでいる。メンバーの1人が答えるのに時間がかかったのは、本当にマイクが消音になっていたからなのか、それとも単に集中していなかっただけで「消音」は口実なのではないか。

 

 電話の消音ボタン1つでこれだけ気になるのだから、難しい時代になったと言っていいだろう。デジタル時代はコミュニケーションに革命をもたらした。これは、印刷機の発明が招いた革命に匹敵する。私たちの話し方は、すでに変化している。箇条書きで伝えることが頻繁になった。私たちの耳に届くものも変わってきた。雑多な情報が押し寄せるため、誤解や混乱はしょっちゅうだ。

 リモートチームで働く人は、こうした難題に日々直面する。ギャラップと米労働省労働統計局が最近発表した推定によれば、米国人の22%が在宅勤務し、また50%近くがリモートの(あるいはバーチャルな)チームに関わっている。いまも続くこのシフトによって、さまざまな新種の行動パターンとスキルが必要になる。

 リモートチームにはなぜ、新たな協働スキルが求められるのか。携帯メッセージやメール、電話会議といったデジタル・コミュニケーションには何がないのか。

 その答えは、ボディーランゲージだ。同じ場所にいても、携帯メッセージの語調やメールの形式は、それぞれの解釈に任されている。最も近しい友人同士でも、ときに混乱するほどだ。こうして生じる誤解が不安を生み、それが士気やエンゲージメント、生産性、イノベーションにも影響を及ぼすおそれがある。

 リモートコミュニケーションでは、通常の会話のペースが乱される危険性もある。メッセージのやり取りに時差が生じるため、受け取ったコメントへの感情的な反応が持ち越されたり、表面に現れなかったりすることが頻繁にある。

 メールを書いて、ただちに「送信」ボタンをクリックしてから、そのメールを相手がどう受け止めるかを案じたことが、いままでに何度もあっただろう。あなたが夜遅くに送信したメールを上司が見て、プライベートな時間の侵害と考えるだろうか。もしそうであれば、上司はそれをあなたに告げるだろうか。

 この種の非同期の意思疎通にはだいぶ慣れてきたかもしれないが、それでもやはり時差があるコミュニケーションには、社会的交流に関する通常ルールが通用しないケースが少なくない。すぐに反応が返ってこないことで、気もそぞろになったり、あれでよかったのだろうかと後悔したり、あるいは、自分のチームへの不満がつのることさえありうる。

 リモートチームが最高水準のパフォーマンスを発揮するには、新しくて、よりよいチームの運営方法を探す必要がある。

 まず認識すべきは、リモートコラボレーションには3つのタイプの距離があることだ。すなわち物理的な距離(場所と時間)、運営上の距離(チームの規模、処理能力とスキルのレベル)、そして心の距離(価値感、信頼、相互依存性)である。

 マネジャーにとってチーム・パフォーマンスを強化する最良の方法は、心の距離を縮めることに重点的に取り組むことだ。リモートコミュニケーションを、定期的なビデオ通話に切り替えてみるとよい。感情的な親密さ(ラポール)を確立して共感を生む点では、メールや電話よりも、ビデオ通話がはるかに優れたメディアだからだ。また、リモートチーム・ビルディングの行事をつくるといい。チームメンバーが定期的に交流して、コラボレーション・スキルを実感できる機会を設けるのだ。

 コミュニケーションを十分に取ってリモートチームの強みを発揮すれば、同じ場所で働くチームにはないよさを手に入れられるだろう。習得すべきベスト・プラクティスを以下に紹介しよう。