なぜケネディ兄弟は協調し、
ミリバンド兄弟は競争したのか

 クリスマスパーティや誕生会に誰を呼ぶか、誰から呼ばれるか。学校の仲良しグループや会社内の派閥のどこに入るか、入らないか。ふるいにかけたメンバーだけを受け入れ、他を排除するという行為が、仲間内において強い忠誠心と長期にわたる結果を生み出す。

 Facebookで友だちになることを望む一方で、その友だちと友だちの数や“いいね”の数を競うなど、人は、協調と競争を揺れ動く。このように、扱う題材がいずれも身近で、読み手の本音に迫まるので、どんどんと先を読みたくなる。

 さらに、理論の説明事例には、著名な出来事や事件が多用され、面白い。例えば、米国大統領のジョン・F・ケネディと弟ロバート・ケネディは協調できたのに、英国首相ブラウンの最有力後継者と言われたデイビッド・ミリバンド元外相が最後の党首選で弟のエド・ミリバンドと競い、破れてしまったのは、なせか。

 また、今年日本で公開の映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』が扱う米国の女子フィギュアスケートの五輪代表争いでの選手襲撃事件、1996年にペルーで発生した大使館員人質事件でのフジモリ大統領の救出作戦などの、背景にある心理劇を解き明かす。

 著者は、現実を直視し、協調か競争か、どちらか一方の道を一直線に目指すのではなく、どちらの道にも進めるように準備しておくことが大切だと述べる。

 人間の本質をより深く理解することで、職場や地域、家庭において、より円滑な人間関係を築くにはどうすればいいかを見極めていけるようになる、と主張する。

 10章立てで、各章末に、「(協調と競争などの)正しいバランスの取り方」というまとめがあり、理解しやすい編集となっている。