デザイン思考に欠けている
スクリーニングの観点

 自然は40億年という長い年月をかけて3000万種類もの形態の生物を生み出し、生物は多様性のある環境を構築しながらそこに適応してきた。人間は、自身の体を進化させることができないが、代わりに道具の発明を通して環境に適応してきた。

 発明が人類にとって進化の代替行為だと考えれば、自然の形態進化のプロセスから学ぶことで、私たちは創造性を高めることができ、人間と社会の進化を加速できるのではないか。筆者はそんな仮説から、進化思考をデザインやビジネスの現場に活かすメソッドの開発に取り組んできた。

 進化思考をあらためて整理し、発表する必要があると感じた背景には、近年隆盛した「デザイン思考」の状況に対する問題意識もあった。形態は統合的な知の結晶であり、デザインから思考プロセスを学ぶというデザイン思考の基本的な視座は、一人のデザイナーとして深く共感する。ただ、現在のメソッドには、デザイナーとしてもデザイン研究者としても、本質的に欠けている点が数多く見受けられ、未完成品のように思えるのだ。