空洞と言われたインターネットのその後が示唆するもの
――「仮想通貨は終わった」という一方で、「ブロックチェーンはこれからだ」という言葉もよく聞かれ、さまざまな領域で応用が検討されています。来るべきブロックチェーンエコノミーの可能性について伺います。

ブロックチェーンを活用した経済社会プラットフォームを構築することによって、人の関与をなるべく抑えた、自律的なスマートエコノミーが実現すると言われています。これをブロックチェーンエコノミーと呼びます。ブロックチェーンエコノミーは、「決済サービス」「サービスを提供するブロックチェーンのプラットフォーム」「法制度の執行システム」という3層構造から構成されます。
パブリックな分散型仮想通貨のブロックチェーンは、いったん動き出すと、だれの意思でも変えられないように設計されています。人の意思が介入しないにもかかわらず、決められた通りに動くエンジンというか、クロニクルですから、決済サービスの部分については、このままの形で手堅く扱うのが正しいと思います。
その上に乗っかるブロックチェーンによるサービス提供基盤は、第1層の決済サービスから独立して存在するのではなく、不可分一体のものとして普及すると予想されます。これによって、間にレフリーがいなくても、つまりお互いどこのだれか知らない同士でも契約通りに経済活動を行うことができるようになるからです。
第3層の法制度の執行システムをブロックチェーンで規律するというのは、契約が破られたときに自動的にペナルティを課すような、いわばブロックチェーンエコノミーの完成形です。
こうした仕組みを活用することで、ブロックチェーン技術はあらゆる産業への応用が可能になると期待されており、経済産業省の報告では、その活用事例として地域通貨、土地の登記、サプライチェーン、シェアリング・エコノミー、スマートコントラクトの5つの分野を挙げています
――第1層の決済サービスで覇権を握ることが、第2層のサービス提供基盤における主導権争いで重要であり、その戦いはすでに始まっていると説かれています。
自由参加型のパブリックチェーンでは、ノードを建てるのは自由なので、ある国でつくられたサービスを、自分がノードを建てて、自分の国に導入しようという人が必ず現れます。最初につくった人が知らないうちにローカライズされてサービスが始まり、気づいたら世界標準になっていることも十分考えられます。ブロックチェーンエコノミーの覇者が登場してしまった場合には、勝者の提示するルールに従うしかありません。「そんなこと起こるわけないよ」という見方もあるでしょうが、インターネットが登場した時に、空っぽの洞窟だと言われていたものが、いつの間にか巨大になり、プラットフォーマーが市場を占有し、既存の産業が消えてしまった事実は、忘れてはならないでしょう。
(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)

