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コア事業の寿命を見極めることは可能か
驚くべきことに、自社のコア事業に秘められている可能性を十分引き出していない、あるいは認識すらしていない経営者が少なくない。急成長市場やおもしろそうなアイデアに飛びついて、まだうま味のあるコア事業を見捨ててしまう企業も後を絶たない。おのれの間違いに気づいた時には、もはや後戻りできない状況に追い込まれていることが多い。
ボシュロムがその典型である。コンタクト・レンズ以外の領域にも手を広げようともくろみ、90年代にはデンタル製品、スキン・ケア製品、補聴器へと多角化を推し進めた。ところが、これらの事業はすべて赤字のまま人手に渡るはめとなり、本来のコア事業ではジョンソン・エンド・ジョンソンに首位を明け渡すなど、苦境に立たされている。
とはいえ、未来永劫安泰なコア事業などそもそも存在しない。ポラロイドのように、力を失ったコア事業にいつまでもこだわっていると、同じような目に遭いかねない。ボシュロムもポラロイドもかつてはウォールストリートのお気に入り銘柄であり、聡明な経営陣によってコア事業のトップ・シェアが守られていた。
ある意味、これらの2社は同じ過ちを犯したといえる。自社のコア事業がライフサイクルのどの段階にあるのかを見誤ったため、コア事業に全力を傾けなければならない時期、拡大路線を図るべき時期、新規事業に取り組むべき時期の判断を間違えてしまった。
では、現時点でコア事業を根本的に見直す必要があるか否かは、どうすればわかるのだろうか。また、何を新たなコア事業とすべきかを、どうすれば判断できるのか。
私はこれらの疑問の答えを見つけるために、過去3年間にわたってさまざまな経営者にインタビューする一方、調査チームを結成して研究を重ねてきた。我々はその結果、コア事業にどれくらい活力が残されているのかを測定すること、すなわち、もうヨレヨレなのか、それともまだ脈があるのかを判断することは十分可能であると考えるに至った。
また、コア事業を大幅に見直した企業、アップル、IBM、デビアス・グループ、パーキンエルマー、その他21社を詳細に調査した結果、コア事業の刷新を図る方法が存在するという結論に達した。
最も確実なのは、不慣れな分野にはけっして手を出さず、これまでの守備範囲の周辺で新たな価値を発掘することである。手持ちの資源や資産のなかで、コア事業に近いものこそ、新たなコア事業につながる可能性を秘めているからだ。
本稿は、先に述べた2つの結論について論じたものである。まず、企業がおかしくなっていることを示す兆候にはどのようなものがあるのかを指摘したうえで、コア事業にどのくらい力が残っているのかを診断する方法について紹介する。
また、いち早く凶兆を見て取り、企業変革に成功した経営者たちが厳しい状況のなかで、どのように改革を進めたかについて説明したい。さらに、いくつかの事例を交えながら、新しいコア事業を見つけるには企業のどのような部分に注目したらよいかも考えてみたい。