●戦略の明瞭性の欠落

 組織が表明したミッションや目的および価値と、従業員や市場の受け止め方との間に整合性がない場合、本当の情報が隠ぺいされたり、歪められたりする確率が2.83倍高くなることが判明した。

 インタビュー回答者の1人はこう述べている。「わが社の優先順位は週単位で変わる。会社が苦境にあると誰も認めたくないので、全員がわらにもすがる思いだ。もはや自分たちのアイデンティティもわからなくなっていて、ただでっち上げている」

 このような状況にある組織は往々にして、旧態依然の戦略を強化するか、あるいは非現実的な戦略的願望に反射的に手を伸ばす。困惑している従業員の士気を再び高めようとして、価値やミッションを声高らかに掲げる。組織の表向きのアイデンティティと実際の行動の間に不一致があると従業員が気づくと、従業員自身もやがて、同じように建て前とは異なる行動を取るようになる。

 テスラはその痛々しい例だ。投資家を欺いた疑いで目下、米司法省の捜査を受けている同社は、「モデル3」の過大な生産目標を約束していた。CEOのイーロン・マスクがいまなお週5000台の生産目標達成を公約するかたわら、労働災害や安全性、ストレスといった問題が明るみに出ている。

 大幅な改善が必要なわけではない。我々の統計モデルによれば、戦略の明瞭性が10%増すだけでも、真実を語る行為を5%改善しうることが判明した。ちなみに戦略の明瞭性は、組織の戦略的ゴールを従業員と市場が共有し、正確に理解することで高まる。

 戦略の明瞭性を改善するには、組織の戦略的ゴールが各従業員の職務にまで浸透している必要がある。CEOから第一線に立つ従業員まで全員が、各戦略的目標について検討し、議論し、受け入れる機会が与えられる必要がある。

 ●不公平な説明責任体制

 従業員の貢献度を測定する社内プロセスが偏っているとか、不公平であると受け取られている場合、情報が隠ぺいされたり、歪められたりする確率が3.77倍高くなることが判明した。

 インセンティブ制度は行動に影響を過度に及ぼす可能性もあるため、我々の分析では意図的に報酬を除外し、調査対象をパフォーマンス・マネジメント・システム、定期的なフィードバック・プロセス、そして文化的認識によって、貢献度がどのように測定・評価されているかを分析することに絞った。

 これらの評価システムがいかに破壊的な影響を及ぼすか、従業員の多くに共通する思いを、インタビュー回答者の1人が代弁している。「なぜこんなに一生懸命に働くのか、自分でもわからない。私がやっている仕事について、上司はまったく理解していない。年度末になると、私は自分で人事考課表に記入し、上司がそれにサインして人事部に提出する。2人で話し合うふりをして、また次の1年も同じことを一から始める。まったく八百長まがいのシステムだ」

 我々の分析結果によれば、説明責任プロセスが不公平だと受け止められている場合、組織のメンバーは成果を潤色し、未達を隠したり言い訳したりせざるを得ないように感じる。それが不誠実な行動のきっかけになる。

 組織における不公正に関する研究結果によれば、従業員が公平感を感じているかどうかと、従業員が所属組織に対して故意に妨害行為に及ぶかどうかには、直接的な相関関係がある。さらに最近の研究では、不公平に比較された従業員は、倫理に反する行動に出やすいことが確認されている。

 幸いにも、我々の統計モデルによれば、パフォーマンス・マネジメントの一貫性を20%改善するだけでも、真実を語る行為を12%改善しうる。ちなみにパフォーマンス・マネジメントの一貫性は、既知の基準に対して、自分の貢献度が一貫して公平に評価されていると、従業員が確信する度合いを見ればわかる。

 我々の所見によれば、説明責任体制が公平公正であると見なされている組織は、標準化されたプロセスを備えており、そのプロセスを通じて、従業員が定期的に相互フィードバックをしている。

 我々と連携したある大手組織では、組織全体にわたる標準的アプローチに従い、各マネジャーが担当チームのメンバーと月1回ワン・オン・ワンのセッションを開いている。四半期ごとに、マネジャーは担当チームメンバー全員のフィードバックをまとめ、その所見を別の担当者に提出する責任を負っている。提出を受けた担当者には、組織全体が当該プロセスから恩恵を受けていることを確認する責任がある。

 ●不十分な組織のガバナンス

 意思決定者たちが一堂に会して、困難な問題について本音で話し合うような効果的プロセスがない場合、真実は葬り去られ、組織は噂やゴシップに頼るようになる。会議の目的や、誰が意思決定者であるかがはっきりしないことがよくあるので、会議はしばしば時間の無駄と見なされる

 ある調査では、シニア・マネジャーの71%が会議を非生産的で非効率と見なしていた。我々の分析では、効果的なガバナンスが不在の場合、組織内で情報が隠ぺいされたり、歪められたりする確率が3.03倍高くなることが判明した。

 だが、我々の統計モデルによれば、ガバナンスの有効性を23%改善するだけでも、真実を語る行為が10%改善される。ちなみに、ガバナンスの有効性は、意思決定が誰によって、どのように成されるかについて、どれだけ広く認知されているかで確認できる。

 ガバナンスがうまく設計されている組織は、決定権の所在が明確な会議を定期的に開き、出席者は悪いニュースや異なる意見に対して正直であることが求められている。全社的なガバナンス設計を順守しない会議や、もはや不要になった会議は廃止される。

 ●部門間のコラボレーション不足

 各部門が組織全体のことを考えず、自部門のことだけを考えるサイロ状態は、組織をまたがる仕事がやりづらいだけでなく、誠実さを妨げる障害にもなる。部門間のライバル意識や不健全な対立が対処されないままの場合、組織内で情報が隠ぺいされたり、歪められたりする確率は5.82倍高くなる。

 分断、特に各部門の境界線に沿った分断は、対立する見解を生み出し、一方が正しく他方が誤っていることを証明しなければならない状態をもたらす。部門への忠誠心が度を超すと、チーム外の人を恐れるべき、憤慨すべき、あるいは責めるべき敵としてとらえるようになる。

 我々がかつて顧客としていたある企業では、対立する目標によって部門間の緊張が高まり、ついには全社崩壊の危機に至った。

 同社では、工場を整備して生産を3倍に拡大する目的で、サプライチェーンの部門長が1950万ドル相当の設備投資を担当することになった。同時に、この投資資金を調達するためにマーケティング部門は予算を削減し、営業部門は営業実績を上げるために担当地域を分割した。その結果、各部門が競合する目標を掲げることになり、また生産性が向上したサプライチェーン部門から過剰な製品がもたらされ、市場に届くまでにボトルネックが頻発した。2年後、この企業は押し込み販売の罪で起訴された。

 部門間コラボレーションを25%改善することで、真実を語る行為の17%改善につながる。ちなみに、部門間コラボレーションは、取り組みが各部門の枠を超えて効果的にコーディネートされているという従業員からの報告で確認できる。

 インテグリティを確保するカギは、信頼を確立することと、より広範なミッションへの共通コミットメントを育成することだ。部門間の関係は、組織全体のために価値を創出することを目指す関係であるべきで、各部門の貢献内容を規定するサービスレベル協定も必要だ。さらに、協力的で相互にメリットをもたらす関係が部門間に存在し、そこには誠実な相互フィードバックを可能にするプロセスが内蔵されていることも重要である。

 これら4つの要因は累積し、4つすべての要因に苦しんでいる組織は、インテグリティ危機に陥る確率が、4要因が1つもない組織より15倍高い。だが、インテグリティの崩壊を避けることはもちろん可能だ。上記4つの問題に焦点を絞れば、あなたも従業員も、そして顧客も切望する「誠実さの文化」が社内に創出される確率を、大幅に上げることが可能になる。


HBR.org原文:4 Ways Lying Becomes the Norm at a Company, February 15, 2019.

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