セルフ・コンパッションへの注目
上司から叱責されて、自分の仕事の進め方が悪いと感じる時。仕事で自分が思うように成果を上げられず、他者から後れを取っていると感じる時。自分には能力がないと感じて、自己批判をすることはないだろうか。
ストレスを受け、自己批判の思考を繰り返すだけでは、悩みは解決しない。自分に思いやりの気持ちを向けるとよいという発想から、セルフ・コンパッション(self-compassion)の研究は始まった。そしていま、仕事や日常生活のさまざまな悩みへの良薬として、関心が高まっている。
日本語では、セルフ=自己、コンパッション=思いやりで、直訳すれば「自分への思いやり」となるが、これは正確ではない。正しくは、自分の悪いところだけでなく、良いところにも気づき、受け入れることで、自分への温かく優しい感情を高めていくことである。その結果、困難に対応できる力がつき、周囲と調和した行動が取れたり、幸福感が高まったりするなどの効用もある。