Hulu(フールー)の船出は華々しいものだった。いまも事業に失敗しているわけではない。着実な成長を遂げているという見方もある。だが、ネットフリックスが市場シェアを大きく拡大する中で、Huluの存在感が薄まりつつあるのは事実であろう。筆者らがその原因を探るなかで、成功を阻害する2つの要因が見えてきた。
大手映画会社各社は、動画配信市場で戦うために、昨年から今年にかけて積極的にビジネスモデルの革新を行ってきた。ディズニーとワーナーメディアから新たな配信サービスの提供が発表されて間もないが、このタイミングだからこそ、ある重要な歴史的問題について考えてみたい。それは、「Hulu(フールー)はなぜ負けているのか」という問題だ。
「負け」と言っては言いすぎかもしれない。2007年、ネットフリックスの配信ビジネス参入から1ヵ月足らずで、初めて公表されたHuluのサービスは画期的なものだった。翌2008年に開始したそのサービスは、21世紀フォックス、NBCユニバーサル、ウォルト・ディズニー・スタジオ/ABCテレビジョンという大手映画会社3社による前代未聞の提携の賜物で、3社の価値ある作品を扱えることがネットフリックスに対する大きな競争優位だった。
たしかに、最初の10年間はそれなりの成功を収めた。47作品がエミー賞に、6作品がゴールデングローブ賞にノミネートされ、2018年末時点の加入者数は2500万人を超えた。すばらしい業績と言えるだろう。
そう、ネットフリックスと比べさえしなければ。ネットフリックスは同期間に336作品がエミー賞に、53作品がゴールデングローブ賞にノミネートされ、2018年末の加入者数は1億3900万人に上った。
Huluは2007年設立当初の記者発表で、「人気のテレビ番組・映画作品を集めた史上最大のインターネット動画配信ネットワーク」を実現すると約束したが、2018年には、動画配信サービス人気ランキング8位、世界のインターネットトラフィックにおいてわずか0.4%を占めたにすぎない。ネットフリックス(世界のネット利用ビデオトラフィックの26.6%)、ユーチューブ(21.3%)、アマゾン・プライム・ビデオ(5.7%)の上位3社に大きく水をあけられた。
あの最初の約束は、どこへ行ってしまったのだろうか?この疑問に答えるには、Huluに設立当初から存在していた、2つの克服しがたい成功阻害要因を理解する必要がある。