-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
リーダーへの転換期に必要なこと
ヘンリック・バルマー(以下、本稿の登場人物はすべて仮名)は、新たに買収した化粧品会社のプロダクト・マネジャーに就任し、同社の取締役会に名前を連ねた時、自分の人脈を再構築しなければならなくなるとは、露ほどにも思っていなかった。
彼の関心は、もっぱらタイム・マネジメントにあった。何より、まずチームを一つにまとめなければならない。生産プロセスも、大幅に変更する必要がある。さらに、事業拡大といった戦略課題にも時間を費やさなければならない。
これだけの仕事をこなしつつ、家族が起きている間に帰宅するには、文字どおり、オフィスに缶詰になって働くしかない。
しかも、日々発生する問題にも対処しなければならない。たとえば、特別注文を請け負っては生産効率の足を引っ張っている営業ディレクターとは衝突が絶えなかった。
ヘンリックは、コネづくりのために人脈を広げるなど、かっこ悪いと決め込んでいた。したがって、人脈づくりに時間を振り向ける気など、彼にはさらさらなかった。
しかし、ある日の取締役会で、新規の買収案件があることを知らされる。もしそれが現実化すれば、自分の将来は危ういかもしれない。ヘンリックはその時、自分が社内のみならず、社外でも蚊帳の外に置かれていることを思い知った。
このようなケースはけっして珍しくない。我々は2年間にわたり、「リーダーへの転換期」を迎えたマネジャー30人の追跡調査を実施した。キャリアの転機が訪れると、マネジャーは自分自身と自分に課せられた役割について再考を迫られる。これをどのように乗り越えていくのか、彼ら彼女らを継続的に観察した結果、マネジャーがリーダーへ成長するには人脈づくりに取り組まなければならないことが明らかになった。
リーダーにとって、サポートやフィードバック、アイデア、経営資源、情報を得るために個人的なネットワークを広げることは課題の一つである。同時に、リーダーを目指すマネジャーたちにとっては、最も不安な課題の一つであることもわかった。
リーダーになりたいという人が不安を抱くというのもわからないでもない。なぜなら、これまで自分の専門分野で優れた能力を発揮し、チームの目標達成に向かって懸命に取り組むことで昇進してきたからだ。専門分野の外に出て、全社的な戦略課題に取り組めと言われても、必要なのは「分析」ではなく「関係」だとはなかなか気づかない。
リーダーにとって、さまざまなステークホルダーや将来のステークホルダーとつき合うことは、けっして本業をおざなりにすることではない。それどころか、むしろリーダーの最も重要な仕事である。しかし、リーダーの卵たちにはなかなかわからない。