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燃え尽き症候群に陥る前に
プレッシャーを与えることで、生産性はさらに高まる。マネジャーはそう信じて、自分自身にも部下にもプレッシャーをかけている。
つまるところ、仕事にストレスはつきものであり、何らかの成果を得るためには、むしろ不可欠な存在なのだ。言い換えれば、ある程度のストレスがなければ、何かを成し遂げることはできない。
しかし、ストレスによって燃え尽き症候群に陥る危険性があるのも、また事実である。アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の調査によれば、全就業者の約40%が過労や仕事の重圧を感じている。ストレスに押しつぶされたり、不安や憂うつにさいなまれたりして、病気を抱えてしまう場合も少なくない。
実際、我々の執務環境は悪化の一途をたどっているといえよう。競争の激化、市場の目まぐるしい変化はもとより、自然災害やテロリズム、不況など、耳をふさぎたくなるような悪いニュースばかりが流れている。
くわえて、雇用コストも急上昇している。ヘンリー J. カイザー・ファミリー財団の調査によれば、アメリカ企業が支払った健康保険料は2004年に11.2%上昇しているが、これは物価上昇率の4倍に当たる。
アメリカ・ストレス協会(AIS)の発表によると、病院や診療所を訪れる患者の約60%がストレス関連の症状や疾患を訴えているという。またアメリカ企業は、生産性の低下、欠勤や早退、医療費やストレス関連コストのために、年間3000億ドルを損失しているという。
そこで問題となるのは、ストレスが好影響を及ぼすのはどのような場合であり、逆に悪影響を及ぼすのはどのような場合であるかだ。その答えを見つけるために、マサチューセッツ州チェスナットヒルにあるハーバード大学心身医学研究所の創設者、ハーバート・ベンソンを訪ねた。
ハーバード・メディカルスクールの准教授でもあるベンソンは、神経科学およびストレス研究の分野で35年を超える実績を誇る。1975年のベストセラー『リラクセーション反応[注1]』の著者としても有名である。
ベンソンはHBR誌にもストレスに関する論文を寄せているが[注2]、ここで初めて、ストレス反応とリラクセーション反応によって生体内に複雑な相互作用が引き起こされることを明らかにした。さらにマネジャーが瞑想を取り入れることの利点についても言及している。最新の著書には、ウィリアム・プロクターとの共著『ブレイクアウト![注3]』がある。
ベンソンとプロクターが最新の研究結果から明らかにした「ブレークアウト原則」とは、積極的にストレスを活用し、その対極にあるリラクセーションのテクニックを用いることで、みずからブレークアウトを引き起こすことができるというものだ。みずからの意思でストレスをコントロールすることで、燃え尽き症候群を防ぐだけでなく、パフォーマンスや生産性を向上できるという。