TWOMEOWS/GETTY IMAGES

ジェンダーの多様性が担保される組織はパフォーマンスが高く、女性を積極的に採りたいと考える企業は増えてきたが、募集をかけても応募がないと頭を抱える採用責任者は多い。なぜ女性から支持されないのか。就職説明会で「仕事も遊びも全力」をアピールしたり、女性ばかりがアシスタント業務を担っていたりなど、企業が無意識に発する「サイン」が女性の関心を失わせていることがあると筆者は指摘する。


「もっと女性を採用したいが、募集しても応募がない。きっと興味がないからだろう」

「仕事に見合う能力のある女性がとにかく少ない」

 大手企業が多様な人材を確保・維持・育成するサポートを行う、私たちスタンフォード大学ヴイエムウェア・ウィメンズ・リーダーシップ・ラボでは、こうしたコメントをよく耳にする。そして、そのたびに釣りの極意を思い出す。「釣れないときは、魚のせいにせず、釣り方を変えなさい」

 自社のダイバーシティが進まないのを、応募しない女性のせいにするのは、もうやめるべきだ。女性がなぜ応募しないのか、その理由を考えてはいかがだろう。「当社はなぜ、女性に人気がないのか」と。

 私たちの研究室が実施した調査によれば、それは企業が採用活動で発している、自社の社風に関する「サイン」に原因がありそうだ。

 最近行った調査で、私たちはウェストコーストカレッジで開催された、IT企業84社による就職説明会に潜入した。調査員は、会社紹介の内容、説明者の属性、使用された文言や画像について記録を取った。そして、参加学生の関心度を測定するために、学生から質問が出るなど、積極的な参加が見られたときにプラスの評価を下し、逆に質問がなかったり、学生が途中退席したりしたときにマイナスの評価を下した。

 その結果、女子学生は、女性を活用しない組織文化だと感じると、関心を失ったように見受けられた。たとえば、よく飲み(冷蔵庫にビールを常備、ビアポンゲーム、飲み会など)、よく遅くまで残業することを例に挙げ、「仕事も遊びも全力」の社風だと説明者が紹介したときは、質問する女子学生が少なかった。その文化は、いろいろな意味で男子学生のクラブの空気感そのものだった。

 女子学生はまた、活躍する男性(宇宙飛行士、コンピュータ技師、兵士、手を挙げて質問をしている姿さえも)や、媚びを売る女性(燃えるトランプを持った赤いボディコンドレスの女性、思わせぶりに振り返る女性)の写真を使ったプレゼンテーションを見せられたときも、関心をなくしていた。

 さらに、技術に関するパートを男性社員が担当し、女性社員は学生を迎え入れたり、Tシャツを配ったり、技術についてではなくワークライフバランスについて語ったりと、アシスタント的な役目に徹しているのを見たときも、興醒めしているように見えた。私たちが観察した説明会の中で、女性エンジニアが技術的な説明をした企業は、4分の1に満たなかった。

 こうしたデータポイントを切り分けて見ていけば、女性がなぜ、そのような説明会や企業に夢中になれないのかが、容易に理解できる。詰まるところ、説明会をリードする熟練社員がほとんど男性だったり、プレゼンに使用している画像がほとんど男性だったり、女性をプロフェッショナルとして扱っていなかったりした時点で、その会社が女性を男性と対等に仕事ができる存在と見なす確率は限りなく低い。女性が立ち入りにくい「楽しくやろうぜ」文化が得意げに語られ、奨励される会社の「社風に合った」女性がどれほどいるというのだろうか。

 このような会社紹介は、その会社――職場や組織文化――が男性優位であることを暗に伝えている。女性たちは、意識してかどうかは別として、そのサインに気づいた。

 女性たちはさらに、自分が活躍できそうな組織文化のサインにも気づいていた。技術について説明する女性の熟練社員や、熟練技術を修得し発揮できる機会の豊富さ、ソフト開発者の技術上の目標だけでなく、企業としての使命を示されたときに関心度が高まった。そうしたプレゼンテーションでは、女子学生は倍の質問をし、最後まで参加した人がはるかに多かった。それは男子学生も同様だった。

 何をもって成功とするかに関して、企業サイドがより広い視野に立てば、仕事に適した人材をもっと見つけられるようになる。

 たとえば、カーネギーメロン大学は、コンピュータサイエンス(CS)プログラムを大幅に変更したところ、CSを専攻したいという女子学生がたった5年間で7%から42%に増加した。大学はまず、広報で発信すべきサインを考えた。「成功」の定義を拡大し、CSに付き物だったマニアックなイメージから離れ、「実社会に即した教育」に注力することにした。また門戸を広げ、高校でのCS経験を条件にするのをやめ、さらにCSと他の分野を同時に追究できるようにした。