デロイト トーマツ グループの戦略コンサルティング部門 モニター デロイトが『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』編集部と共同で開催したセミナー「イノベーション経営とリーダーシップ」(日時:2019年10月30日)から、プログラム後半に行われたパネルセッションの模様を要約して紹介する。パネリストはSOMPOホールディングス グループCDO 執行役常務の楢﨑浩一氏、ヤマハ発動機 執行役員 MC事業本部長の木下拓也氏、三菱ケミカルホールディングス 執行役員 先端技術・事業開発室CDOの岩野和生氏。いずれも自社のデジタル・トランスフォーメーションの中枢を担う経営者たちだ。彼らに加えて、モニター デロイトからは、ジャパンプラクティス リーダー パートナーの藤井剛が参加。モデレーターは前半の基調講演に続き、早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院教授の入山章栄氏が務めた。(レポート前編はこちら

 パネルセッションの前半は、「突出した競争優位性の確立に向け、何に取り組むべきか」と題し、パネリストによるプレゼンテーションが行われ、各社のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に向けた問題意識や実際の取り組みについて紹介があった。

左から、モデレーターの入山章栄氏、SOMPOホールディングス グループCDO 執行役常務 楢﨑浩一氏、ヤマハ発動機 執行役員 MC事業本部長 木下拓也氏、三菱ケミカルホールディングス 執行役員 先端技術・事業開発室 CDO 岩野和生氏、モニター デロイト ジャパンプラクティス リーダー パートナー 藤井 剛氏。

ディスラプションに耐えられる企業に変革するため、外部からデジタル人材を招へい~SOMPOホールディングス

SOMPOホールディングス グループCDO 執行役常務 楢﨑浩一氏

 一人目のプレゼンテーションは、SOMPOホールディングス グループCDO 執行役常務 楢﨑浩一氏。保険業界はデジタル・ディスラプションの真っただ中にある。自動車業界ではMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の変革が起きており、スマート・ホームやデジタル・ヘルスといったサービスの出現は、保険商品そのものの存在意義を危うくしている。

 3年半前、私がシリコンバレーのスタートアップからこの会社に転じた理由は、「GAFAからうちの会社を守りたい。DXをして、デジタル・ディスラプションに耐えられる企業に変革していかないと、生き残っていけない」という櫻田謙悟CEOの危機感に共感したからだ。

 櫻田は、2016年度からスタートした中期経営計画で「安心・安全・健康のテーマパーク」をスローガンに掲げた。背景には、保険業界は安心、安全、健康を必ずしもお客様に提供できていないとの反省がある。例えば、多くの人が自動車保険に加入しているが、事故が起こるまで保険は何の役にも立っていない。安心・安全が足りない保険業界だからこそ、プロアクティブなカスタマー・エクスペリエンス(CX)を提供したいという思いがあった。

 現在、DXは持続的イノベーションと破壊的イノベーションという2つのフレームワークの下、3拠点にデジタル・ラボを開設し、最新技術・ビジネスモデルの研究や新サービスの試行展開など、さまざまな取り組みを行い、スタートアップとの提携などオープンイノベーションを進めている。1つ紹介すると、シリコンバレーの防災スタートアップ企業One Concern、ウェザーニューズと提携し、3社でAIを活用した防災・減災システムの開発を行っている。

 2018年7月には内製開発チームであるSprintチームを立ち上げ、25名のエンジニア、デザイナーを採用した。従来の外部に依存した体制から脱却し、アジャイル型開発手法を用いて、スピード感をもった実証実験体制を構築した。若い人材がジーパン姿でデジタル起点の商品、サービスの開発に日々取り組んでいる。