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企業再生は営業力の強化から始まる
再建を請け負うCEOは、たいていコストにメスを入れる。日産自動車のカルロス・ゴーンは、フランスのマスコミに「ル・コスト・キレール」(コスト・カッター)と呼ばれた。タイコ・インターナショナルのエドワード・ブリーン、医療保険会社エトナのジャック・ローと聞けば、レイオフのイメージが浮かんでくる。またJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンは、情け容赦ないコスト削減で有名である。
しかし世界的な製薬会社、シェリング・プラウ会長兼CEOのフレッド・ハッサンは、売上げを回復させることで再建を推し進める。彼の改革は、これまですべて営業力の強化から始まっている。これには、彼の職業遍歴が大きく関係している。
彼のキャリアは肥料の営業から始まった。彼はパキスタン生まれで、父親は外交官、母親は女性解放運動の草分けであった。その穏やかな口調と控えめな人柄は、とても営業には似つかわしくなかった。
しかし、彼がこれまで成功を重ねてこれたのは、この営業の経験があったからこそである。97年、不振にあえぐ巨大製薬会社、ファルマシア・アンド・アップジョン(P&U)のCEOに就任して以来、たえず営業職に理解ある経営者として知られている。
ハッサンは、まさしくチャレンジャーである。彼は、2000年にP&Uとモンサントの合併を成立させ、この新会社ファルマシアを軌道に乗せた。2003年、ファイザーが600億ドルで同社を買収するまで、その舵を取ってきた。その次には、迷走するシェリング・プラウの再建請負人としてCEOに就任した。それから3年、彼の指揮の下、シェリング・プラウの業績はあらゆる分野で改善し、目覚ましい回復を遂げた。
ハッサンは、営業改革から再建を始める。我々は彼のこの手法に着目し、ハッサンへのインタビューを決めた。そして2006年2月、ニュージャージー州ケニルワースにあるシェリング・プラウ本社を訪れ、彼にさまざまな質問を投げかけた。
彼はこれまでの経験から、企業価値を長期的に向上させるには、コスト削減より売上げの回復が重要であるという信念の持ち主であり、またそのカギは営業力の強化であると考えている。
CEOはまず、営業部門の業績改善に取り組むべきであり、そうすれば全社の業績もまたたく間に回復するという。売上げが回復すれば、他の変革プロジェクトの資金が十分確保され、じっくりこれに取り組めるからだ。
ただしそのためには、営業部門を正しく組織し、彼ら彼女らを奮起させ、正しい顧客リレーションシップを構築していかなければならない。これは大仕事である。
製薬業界における正しい顧客リレーションシップとは、MRが医療関係者たちの信頼を勝ち取り、患者のためにより優れた治療法を見つける一助を提供することにほかならない。特にライバルがひしめき合う市場の場合、シェアを獲得するには、何よりもまず顧客である医療関係者に頼られる存在になることが欠かせない。