デュアルキャリア・カップルの
「罪悪感」を取り払いたい

 子どもを保育園に送り出す時、泣いてしがみ付く小さな手をぎゅっと握り、意を決してその手を放し、職場に向かったあの日々。「子どもを預けてまで働くの」「かわいそうじゃない」。母からの何気ない一言一言が、とげのように胸に刺さって抜けなかった。気がつかないうちに、子どもに対して「ごめんね、ごめんね」と繰り返していた。ごめんねといっても、それは本当の謝罪ではない。子どもに対してもっとできるのではないかという感情が「罪悪感」となり心を覆っていた。その罪悪感を和らげようとして使っていたのが、ごめんねだった。

 ある時、ふと強い信念のような強い気持ちが腹の底から湧いてきたことを、いまも鮮明に覚えている。「お母さんが笑っていることが子どもには一番ではないか」「お母さんが自分の人生を楽しんでいること、太陽のように明るく輝いていることが、家族にとって一番いいことではないか」と。次の日から、息子に「ごめんね」と言わなくなった。それ以降、不思議なことに息子は笑顔で保育園に行くようになった。

 仕事と子育てとの両立をどうすればよいのかについては、常に悩んできた。よい母とは何か、よい妻とは何か、よい社員とは何か……時に、頭の中がぐちゃぐちゃになることもあった。