カップルが衝突した時に必要なアプローチ
カミーユとピエールが出会った時、2人とも40代前半で離婚を経験した後だった。彼らは仕事に全身全霊で打ち込み、2人の新しい関係に対しても真剣だった。会計士のカミーユは勤務先の企業でパートナー就任に向けて邁進していたが、前夫には「ほどほどにしてくれ」と言われていた。自動車メーカーで製造マネジャーを務めるピエールは、前妻が彼の転勤に際して自身のキャリアを諦めたため、離婚時には泥沼の事態となった(本稿で紹介するカップルには仮名を使用している)。
過去に手痛い思いをした2人は、互いの仕事を同等に扱うことにした。滑り出しはうまくいっていた。しかし、2年も経つとカミーユは、自分のキャリアパスは「優秀な生徒が選ぶべき仕事」という理由で選んだものであると気づき、袋小路に迷い込んだように感じ始めた。
ピエールは約束を果たそうと、カミーユの不安に穏やかに耳を傾け、他の選択肢を探すように促した。しかし、数カ月後には、その精神面でのサポートや複雑な家族関係への対応(2人とも前の結婚で子どもをもうけていた)、大変な仕事の責務がピエールにずしりと重くのしかかるようになった。自分自身の仕事の方向性にも悩み始めた彼は、はたして自分たちに方向転換ができるのかと疑問に思うようになった。仕事を離れて休むこともままならず、ゆっくり考える時間も、互いの家族や2人の関係がうまくいくように対処する時間もあまりなかった。2人ともいら立ち、疲れ果てて、これからも人生に意義や充足感を見出すには、どうすればいいのかと悩み始めた。