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職場の男女格差を埋めようとする取り組みが進んでいるとはいえ、まだまだ不十分である。なかでも、女性ならではの心身の変調に対する理解は乏しい。その代表例が、更年期に関わる問題である。多くの女性が更年期特有の症状に苦しんでいるにもかかわらず、その事実を率直に申告することが困難で、あからさまな侮蔑や嫌がらせを受けることさえある。リーダーにはこの状況を変える責任があり、筆者は3つの取り組みを提案する。


 女性は誰もが、それを経験する。職に就いている期間に、それが始まる人も多い。ところが、職場でそれに直接言及されることはほとんどない。たいてい、「変化」や「移行」といった婉曲表現が用いられる。職場の会話で話題にされるとしても、そのときは冗談に包んで言及されることが多い。

 そろそろ、その問題に、すなわち職場での更年期の問題に真剣に向き合うべきだ。そして、更年期特有の症状に苦しむ女性たちが、もっと声を上げやすい環境をつくる必要がある。

 データを紹介しよう。女性の更年期が始まるのは平均51歳。症状は4~8年続くことが多い。米国の就労者人口の中で、50歳以上の女性は6100万人にも上る。英国で就労者人口全体に占める割合が最も急速に増加しているのも、この年齢層の女性だ

 更年期の女性は、仕事に影響があるような症状を経験する。最近の英国人材開発協会(CIPD)の調査によると、更年期の女性の59%は、仕事に悪影響があると述べている。仕事の課題を処理するのが難しいと答えている人も約半分に上る。別の調査では、900人近くの専門職女性が自信や集中力、記憶力の低下を感じ、仕事に大きな支障が生じていると述べている。

 更年期の女性は、エストロゲン(女性ホルモン)のレベルが低下し、テストステロン(男性ホルモン)のレベルが上昇するため、声のかすれを経験するという研究もある。しかも、咽頭周辺の筋肉と組織が弱まり、声帯がうまく機能しなくなる。その結果として、女性たちは文字通り「声を失う」場合がある。

 しかし、更年期の女性は、比喩的な意味でも「声を失う」。前出のCIPDの調査によれば、3分の1近くの人は更年期の症状が原因で職場を病欠したことがあるが、上司に欠勤の本当の理由を話せた人は4分の1にとどまる。

 この問題を話題にしづらい状況の下で、働く女性の更年期にまつわるコストについても、あまり論じられていない。とりわけ論じられていないのは、更年期をめぐる沈黙が生むコストだ。その沈黙のせいで、柔軟な勤務体系の導入や職場環境の改善など、女性たちの助けになるかもしれない変革が停滞している。

 更年期についてオープンに話せない状況、ひどい場合にはあからさまな侮蔑や嫌がらせがまかり通っている状況は、仕事への満足度を下げ、不要なストレスや不安、ときには抑鬱を生み出す。そのような問題は、女性たちが支援を受けられないために生じる。

 また、更年期の女性自身だけではなく、同僚や組織が被るダメージも見過ごせない。更年期にまつわる問題が原因で生産性が落ち込んだり、場合によっては職場を去る女性社員が出てきたりするからだ。