
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、人々は深い悲しみの感情に支配され始めている。この状況が永遠に続くわけではないと頭では理解できていても、不安で押し潰されそうになる。本稿では、悲観に関する世界的権威デーヴィッド・ケスラーへのインタビューを通して、悲しみを自覚することの重要性や、この感情とどのように向き合うべきかが語られる。
最近、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の編集スタッフ数人でオンライン会議を行った。コンピュータのスクリーン上に大勢の顔が映し出された。リモートワークの導入が進む中で、いまあちこちで急速にお馴染みになりつつある光景だ。
私たちはその日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう日々に、ウェブサイトに掲載予定の原稿について話し合い、読者の役に立つ情報を提供するために何ができるかを議論した。しかし、それだけでなく、自分たちの心の状態も話題にした。
自分が感じているのは深い悲しみの感情だと、会議参加者の一人が述べた。すると、スクリーン上に映し出された大勢の顔がいっせいにうなずいた。
問題の正体がはっきりすれば、その問題に対処しやすくなるのではないか。
そう考えた私たちは、悲嘆に関する世界的権威であるデーヴィッド・ケスラーに話を聞いた。ケスラーはエリザベス・キューブラー・ロスの『永遠の別れ』の共著者で、近著Finding Meaning(未訳)では、それまでの「悲嘆の5段階」に加えて6つ目の段階を新たに提唱した。
ケスラーはロサンゼルスの病院運営団体で10年以上勤務しており、同団体でバイオハザード対策チームの責任者も務めている。また、ロサンゼルス市警の心的外傷スペシャリストとして待機したり、赤十字の災害支援チームに所属したりするなどの社会奉仕活動にも携わってきた。
深い悲しみを感じている人を支援するためのウェブサイトwww.grief.comの創設者でもある。同サイトには、167ヵ国から年間500万人以上がアクセスしている。
ケスラーは私たちのインタビューの中で、自分が深い悲しみを感じていると自覚することの重要性、そうした感情に対処する方法、その経験に意味を見出す過程について語った。以下はそのインタビューの内容である(文意を明確にするために、発言の細部を整理していることをお断りしておく)。