(1)経営幹部が高い分析能力を確実に備える

 組織の上層部が深い専門知識を持つ場合にのみ、エビデンスに基づく意思決定を下そうという傾向が組織全体に浸透する。

 分析モデリングの責任を部下に負わせるケースがあまりに多いが、それではアナリティクスのマインドセットが組織に真の意味で根づきにくくなる。他の分野と同じで、アナリティクスに秀でるためには習熟と経験が必要だが、若い部下たちは、それらを持ち合わせていない可能性が高いのだ。

 専門知識の中でも欠かせない分野として、分析すべきデータセットに関する深い理解と、その限界と潜在的バイアスを認識する能力がある。適正なリサーチデザインに対する理解は必須で、信頼性や妥当性などの基本的な測定概念に関する知識も、同じく不可欠である。

 そのようなデータに関する深い知識に欠け、適切な分析テクニックを利用しないままでは、間違った結論に達するおそれがある。すると、最善ではない決定や行動に至ることになりかねない。

 さらに、組織の幹部レベルによる指揮が欠かせない機能として、適切なデータガバナンスの確立が挙げられる。アナリティクスの規模を拡大するためには、優れたデータハイジーン(衛生管理)が必要である。

 それにはアーキテクチャ、インフラ、役割や責任を定めることから、データ収集、検証、格納、利用に関する継続的な管理や監督までに及ぶ。データの機密性に関する規範が尊重かつ遵守され、信頼できる管理者であることが立証されなければならない。

 このレベルのデータガバナンスへの投資や規律は、トップダウンでもたらされる必要がある。アナリティクスの責任を組織の下層部に委ねるのではなく、多くの上級職ポジションを真のアナリティクス専門家のために用意し、必要な知識とスキルを持つ人がそうした地位に就けるよう促すことが肝要だ。

 能力の真価を見極めるには、次の2点をテストするとよい。いざというときに、この幹部はみずから統計モデルを使い、その結果を解釈できるか。データの利用法と、そこから引き出した結論を弁護できるか、である。

 その答えがノーの人は、アナリティクスの上級職に就けないだろう。